警察の人種差別を認定、白人警官は訴追せず 米司法省

ホルダー司法長官。事件前からファーガソン警察の警官とアフリカ系米国人住民の対立は深かったと指摘

2015.03.05 Thu posted at 11:22 JST

(CNN) 米ミズーリ州ファーガソンで黒人少年が白人警官に射殺された事件で、米司法省は4日、事件に関する調査報告書をまとめ、白人警官の刑事責任を問うことはできないとの判断を示した。一方で、ファーガソンの警察や司法制度には、アフリカ系米国人に対する組織的な人種差別があると認定した。

この事件では2014年8月、ファーガソン警察の警官だったダレン・ウィルソンさんが、アフリカ系米国人のマイケル・ブラウンさんを射殺。ファーガソンでは暴動が起き、警察の人種差別に対する抗議デモが全米に広がった。

しかし司法省の報告書では、「ウィルソンさんの行為は連邦公民権法違反には該当せず、訴追はできない」と結論付けた。

司法省は調査の結果、ブラウンさんがウィルソンさんのパトカーに近寄り、もみあいになった事実を認定。ブラウンさんに銃を奪われそうになったというウィルソンさんの主張については裏付けが取れなかったとしながらも、「身の危険を感じたというウィルソンさんの主観に対して検察側が反証できるような証拠は存在しない」とした。

検察によれば、ブラウンさんはいったんウィルソンさんから55メートルほど離れた後、振り向いてウィルソンさんの方に向かってきたとされる。ブラウンさんは両手を挙げていたのに撃たれたという証言もある一方で、これと食い違う証言もあり、マスコミに対して語った内容を後に撤回した目撃者もいた。

白人警官の不起訴を受けて抗議デモが発生

証言にこうした食い違いはあっても、「ブラウンさんがウィルソンさんに撃たれた時点で、ウィルソンさんの方に動いていたことは証明された」と報告書は結論付けている。

司法省の発表を受けて、ウィルソンさんを不起訴としたミズーリ州のセントルイス郡検察は同日記者会見し、不起訴を決めた司法省の判断は妥当だとの見方を示した。

一方、司法省の別の報告書では、ファーガソン警察のアフリカ系米国人に対する人種差別の実態を指摘した。

ホルダー司法長官は、今回の事件が起きる前からファーガソン警察の警官とアフリカ系米国人住民の対立は深まっていたと述べ、「1つの悲しい出来事のために、ファーガソンの街が火薬庫と化した状況は想像に難くない」と振り返った。

アフリカ系米国人に対する過剰な警察力行使の一例として、アフリカ系米国人のみが警察犬にかまれていることを挙げ、人種に根差す偏見以外にこれを説明できる理由はないと指摘している。

抗議デモは地元ファーガソンだけでなく、ニューヨークなど全米各地に広がった

また、ファーガソン警察の警官は頻繁に不当な家宅捜索を行ったり、市民を不当に拘束したり、召喚状発行の数を競ったりしていたとも語った。

報告書によれば、警察や裁判所は市の財政のためにマイナーな交通違反などを取り締まったり、アフリカ系米国人ばかりを狙って違反切符を切ったり、歩行者の交通ルール無視を取り締まったりしていたとされる。

また、市の職員の間で交わされていた電子メールに人種差別的な内容があったにもかかわらず、職員や警官が処罰された形跡も、誰かがたしなめようとした形跡もなかった。

メールの中にはオバマ大統領をチンパンジーと描写したり、ミシェル夫人を馬鹿にする内容のものもあったという。

司法省は今後の対策として、警官の偏見解消に向けた研修や地域社会との交流を深めることなど、26項目の改善案を提言している。

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