(CNN) イスラム過激派「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の人質殺害ビデオに繰り返し登場していた覆面姿の男、通称「ジハーディ・ジョン」は、クウェート生まれで英ロンドンに住んでいた「モハメド・エンワジ」という人物と見られることが分かった。複数の米当局者や米議会関係者が26日に明らかにした。
ジハーディ・ジョンは覆面姿でイギリス英語を話し、ジャーナリストの後藤健二さんら2人の生命と引き換えに2億ドルの身代金を要求したISISのビデオにも映っていた。
ワシントンポスト紙によると、エンワジ容疑者は2012年にシリアに渡航し、その後ISISに加わったとみられる。
ロンドン警察や英当局は、ジハーディ・ジョンの身元の確認を避けている。一方、エンワジ容疑者を知るロンドンのイスラム教徒人権擁護団体CAGEのアシム・ケレシ氏は26日、ジハーディ・ジョンとエンワジ容疑者は「驚くほど似ている」と証言した。ただ、男が覆面をしているため100%の確証は持てないとしている。
CAGEによれば、エンワジ容疑者は1988年にクウェートで生まれ、6歳の時に英国に移住。ロンドンのウェストミンスター大学でコンピュータープログラミングを専攻して2009年に卒業した。イギリス英語を話し、アラビア語も堪能で、大学で学んだ内容や語学力を生かしてアラブの国で働くことを希望していたという。
しかしワシントンポスト紙が友人の話として伝えたところでは、2009年に東アフリカのタンザニアに旅行したことが転機になった。
タンザニア渡航はサファリが目的だったが、報道によればエンワジ容疑者は入国時に拘束されて強制送還された。2010年には英国でテロ対策当局に拘束されたとワシントンポスト紙は伝えている。
CAGEには2009年、「英当局に嫌がらせをされている」と訴えて助けを求めに来たという。
クレシ氏の知るエンワジ容疑者は、支援してもらったお礼をCAGEの事務所に持参するなど礼儀正しい人物で、ISISのビデオに登場する人物の残忍さとはかけ離れているという。
もしジハーディ・ジョンが本当にエンワジ容疑者だったとすれば悲しいことだが、予想できないことではないとクレシ氏。多くのイスラム教徒はエンワジ容疑者のように、社会の中で疎外感を感じていると指摘した。
「もし自分がよそ者のように扱われたとしたら、自分が所属できる別の居場所を探さないだろうか」「過去13年の我々の国家治安戦略は、疎外感を深めさせる一方だった」と同氏は話す。
一方、英テロ対策シンクタンクのキリアム財団は、エンワジ容疑者のタンザニア渡航が阻止された理由について、同容疑者がソマリアの過激派組織「シャバブ」に加わろうとしていたと情報当局が見ていたためだと説明。CAGEがテロ対策当局を批判するのは筋違いだと反論している。
ISISビデオの覆面男、身元特定か