(CNN) ウクライナ政府軍は18日、親ロシア派との間で激しい戦闘が続いていた東部の要衝デバリツェボから政府軍の80%が撤退したことを明らかにした。
デバリツェボでは15日に停戦が発効した後も戦闘が続き、停戦は崩壊の危機に陥っていた。
ウクライナ政府にとって、デバリツェボを親ロシア派に制圧されたことは大きな打撃となる。親ロシア派は停戦ラインが示された時点で既に、同地を自分たちの支配地域とみなしていた。政府がどのような対応に出るかは不明。
ポロシェンコ大統領は声明を発表し、「デバリツェボは我々が掌握していた。包囲網はなかった。我が軍は計画的、組織的に、全重火器を持って同地を去った」と強調。残る部隊も新しい防衛線まで撤退させるとした。
また、米国や欧州連合(EU)首脳とも会談し、ロシアの停戦合意違反に対して「断固たる対応」を求めたと述べている。
首都キエフで記者会見した国防報道官は、デバリツェボからの「組織的な撤退」は数時間以内に完了すると語った。
デバリツェボの近くで取材しているCNN記者によると、数時間前まで政府軍の拠点があった地点では、荒れ果てた道路にがれきが散乱し、検問所は全壊していた。
装甲兵員輸送車は爆撃された跡があり、ウクライナ兵と思われる2人の遺体があった。戦闘中に鳴り響いていた砲撃音は聞こえなくなっていた。
ロシアのラブロフ外相はモスクワで記者会見し、停戦合意前にデバリツェボで包囲されていたウクライナ軍の兵士数千人に対してプーチン大統領が危険を知らせようとしたにもかかわらず、ポロシェンコ大統領は自分たちが包囲されていることを認めなかったと説明。今は兵士たちの人命を救うことを目標としなければならないと述べた。
デバリツェボを除けば「すべての前線で衝突がやみ、重火器の撤去が始まっている」とラブロフ外相は強調。ウクライナや欧米諸国に対し、デバリツェボを「プロセス崩壊の口実にしてはならない」と力説した。
停戦監視と重火器撤去の監視に当たることになっている欧州安全保障協力機構(OSCE)は、17日の時点でデバリツェボ入りできていない。18日に再び現地入りを試みるとしている。
EUのモゲリーニ外交安全保障上級代表は18日、デバリツェボでの親ロシア派の行動は「明らかな停戦合意違反」に当たると非難。「もし合意に違反する戦闘などの展開があった場合、EUは適切な行動に出る用意がある」と牽制(けんせい)した。