子どもに米国籍を――米で出産する中国人が急増

子どもに米国籍を取らせるため、米国で出産する中国人が増加しているという

2015.02.09 Mon posted at 17:21 JST

香港(CNNMoney) 生まれてくる子どもに米国籍を取得させようと、米国に短期滞在して出産する中国人女性が増えている。こうした流れのなかで、「出産ツーリズム」が活況を呈する一方で、米国内からは妊婦の流入を食い止めるための規制を導入するよう求める声も出てきている。

米カリフォルニア州で昨年出産した27歳の女性は、大金をはたいて綿密な準備を進めたという。「妊娠3カ月のころから渡米の準備を始めた」「米国で先に出産した友人に相談して医師を紹介してもらい、数カ月滞在できる場所を手配して、航空券を買った」と話す。

米国には、国内で生まれた子どもは米国籍を取得できるという規定がある。これを頼りに中国から渡米する妊婦が増え、関心の高まりに伴って「出産ツーリズム」業界も成長。中国国営メディアによると、米国で出産した中国人女性は2008年の4200人から、2012年には2倍超の約1万人に増えた。

米国籍の子どもがいれば、大気汚染や食の安全に対する不安が増大した場合に一家で中国を脱出できる。富裕層はさらに、習近平(シーチンピン)国家主席が進める腐敗撲滅キャンペーンに対しても神経をとがらせている。

米国籍がより良い教育機会の獲得につながると考える人も

富裕層は特に中国からの脱出願望が強く、昨年の調査では、1000万元(約1億9000万円)以上の預金をもつ中国人のほぼ3分の2が、国外に移住したか、移住の計画を進めていることが分かった。

冒頭の女性は北京在住だが、米国籍を持つ子どもは北京市内のインターナショナルスクールに通わせることができ、海外の高校や大学に進学する道も開ける。

別の35歳の女性は、中国の一人っ子政策をかわす手段として米国での出産を選んだ。一人っ子政策は緩和されたといえ、誰もが恩恵を受けられるわけではない。

この女性は米国での出産のために約3万ドル(約350万円)を費やしたといい、生まれた娘は早ければ小学校から米国の学校に通わせる予定だ。

滞在先は業者に頼んでロサンゼルス市内の中国人妊婦に人気のある地域で短期賃貸物件を手配してもらった。

大気汚染の問題も子どもに米国籍を取らせたいと考える要因の一つと見られている

こうした業者は多数存在していて、高級宿泊先、食事、運転手、医師への紹介などをパッケージにした「マタニティーホテル」をウェブサイトで宣伝している。

中国人妊婦の多くは米本土での出産を選ぶが、中国から近く、中国人観光客のビザ免除制度がある北マリアナ諸島(米自治領)も人気がある。

こうした妊娠ツーリズムの急成長を受け、米国では一部議員から政府に対し、妊婦の流入を食い止めるための規制導入を求める声も強まってきた。

物価が高騰し続ける北京に比べると、米国は不動産価格が手頃で生活費も安く済む。このため米国で出産した女性たちは米国への移住も検討中だ。

ただし米国籍の子どもにはいずれ米国の税金を払う義務が生じる。「今のところそのことは考えていない。いずれにしても、生まれた子どもが18歳になるまで待たなければならない」と女性は話した。

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