(CNN) イスラム過激派「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」は3日、拘束していたヨルダン空軍パイロットを殺害したとする映像をインターネット上に公開した。
配信された映像と画像によると、ヨルダン空軍のムアーズ・カサースベ中尉はおりの中に閉じ込められ、生きたまま火をつけられて死亡したとみられる。CNNはこれらの放映を控えている。
映像の長さは22分間。冒頭でヨルダンのアブドラ国王を非難し、中尉殺害は国王の責任だと追及している。
ヨルダン軍の報道官は映像公開の直後、中尉は1月3日に「暗殺」されていたと述べた。
カサースベ中尉は昨年12月、ISISが「首都」と称するシリア北部ラッカ付近を米軍主導の有志連合が空爆した際、操縦していた戦闘機が墜落し、同機から脱出したところをISISに拘束されたとみられる。有志連合の戦闘に直接参加する兵士が人質となったのは、これが初めてだった。
ISISは先週、日本人人質を解放する条件としてヨルダンが収監しているサジダ・リシャウィ死刑囚の釈放を要求し、交換が成立しなければカサースベ中尉を殺害すると警告。ヨルダン側は中尉の生存を示す証拠の提示を求めてきたが、こうした交渉の時点で本人はすでに殺害されていたことになる。
ヨルダン政府の報道官は国営テレビで「ISISによる残虐行為を疑っていた人々に証拠が突き付けられた。ヨルダンの力を疑っていた人々に対しても、まもなく証拠が示されるだろう。中尉の死を無駄にはしない」と強調した。
ヨルダンの首都アンマンでは、報復を求める市民らがデモを行った。
オバマ米大統領は、中尉の殺害映像が本物と確認された場合、「ISISの凶暴さと残酷さを示す例がまたひとつ加わったことになる」「有志連合側の警戒と決意も一段と強まるだろう」と述べ、ISISの思想がいかに破たんしているかをうかがい知ることもできると指摘した。
ヘーゲル米国防長官も同様に、ISISの行為には命を軽視する態度が表れていると非難し、「この卑劣な蛮行によってわれわれの決意は強まるばかりだ」と語った。
カサースベ中尉が拘束された当時、父親がヨルダン紙に語ったところによると、中尉は謙虚な性格で信心深く、イスラム教の聖典コーランを暗記していた。「他人に危害を加えたことは一度もなかった」という。
ケリー国務長官は中尉について「勇敢で思いやりと信念があり、ISISとは正反対の人物」だと述べた。また、それに対してISISは「殺りくと破壊以外になんの行動計画も持たず、同じイスラム教徒の命さえ尊重しない」集団だと非難した。
ヨルダン人パイロット殺害か ISISが映像公開