仏紙襲撃、表現の自由か身の安全か 風刺画の転載見送った報道各社の判断

人びとが「私はシャルリー」のスローガンを掲げて抗議している

2015.01.09 Fri posted at 15:49 JST

ニューヨーク(CNNMoney) フランスの風刺週刊紙「シャルリー・エブド」が襲撃された事件。同紙はイスラム教の預言者ムハンマドを題材にした風刺漫画で過去に何度も物議をかもしてきた。事件を伝えた大手マスコミのほとんどは、同紙の漫画の転載を見送った。

そうした中でワシントンポスト紙は8日の紙面で風刺画の転載に踏み切った。「表紙を見せることで読者が事件の全容を理解する手助けになる」。同紙デスクのフレッド・ハイアット氏はそう解説する。

主要ニュースサイトも軒並みシャルリー・エブドの風刺画をスライドショーで紹介している。

しかし多くのテレビ局や新聞社では、風刺画を掲載して殺害されたジャーナリストへの支持を表明したいという衝動が、安全に対する不安やデリケートな問題の扱いに関する不安に阻まれた。イスラム教徒の間ではムハンマドを描くことはタブーとされる。

転載を見送った判断についてはジャーナリストの間でも意見が分かれる。検閲に当たるという見方や、テロを黙認することになるとの指摘もある。

CNNはシャルリー・エブドの風刺漫画を言葉で説明するにとどめ、漫画そのものは放映しなかった。過去のムハンマドの風刺漫画についても同じ対応をしている。

8日午前の定例編集会議でこの判断について説明したCNNワールドワイドのジェフ・ザッカー社長は、風刺漫画について「ジャーナリストとしては是非とも使いたいし、使うべきだと思う」としながらも、「経営者としては、世界の従業員の安全を守ることの方が現時点では大切だ」と語った。

世界最大の報道機関であるAP通信の広報は7日、「故意に挑発的な画像を流さない」ことが同社の長年の方針だと説明した。これにはムハンマドの肖像も含まれるという。

ニューヨークタイムズ紙も「慎重に検討した結果」、漫画についての描写だけで十分と判断したと説明。NBCやABCは、無神経とみなされたり不快感を与えたりするような漫画などは見せない立場だとした。

CBSでは禁止通達は出さず、プロデューサーに判断を委ねる形を取った。フォックスニュースはテレビでムハンマドの漫画を放送する予定はないとする一方、インターネットにはスライドショーを掲載している。

各地で半旗が掲げられて行事が中止され、エッフェル塔は午後8時に消灯した

一方、デイリー・ビースト、ゴーカー、ハフィントン・ポストといった大手ニュースサイトは7日の事件を受けて、2011年のムハンマドの漫画を含むシャルリー・エブドの漫画を転載した。

デイリー・ビーストは2011年に公開していたスライドショーを7日に更新し、シャルリー・エブドの表紙を飾った「ショッキングな」漫画16枚を紹介している。

同サイトの発行人ノア・サッチマン氏は、スライドショーの掲載にためらいは一切なかったと強調。「我々は表現の自由を支持している。何よりもあの恐ろしい襲撃を目の当たりにして、勇気ある編集者や記者、漫画家への支持を表明したいと思った」と語る。

ゴーカーのマックス・リード編集長は、「漫画を掲載したのはニュース価値があるからだ」と述べ、「シャルリーが掲載して物議をかもした画像のことを話題にする以上、その画像そのものを読者に見せる義務がある」と強調した。

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