二つの司法制度――格差広がる米国

米国には2つの司法制度が存在するとの見方も

2014.12.31 Wed posted at 17:23 JST

(CNN) 米ミズーリ州ファーガソンで黒人少年マイケル・ブラウンさん(当時18)が警官に射殺され、ニューヨーク市スタテン島では黒人男性エリック・ガーナーさん(当時43)が警官に首を絞められて死亡した。

白人警官が黒人男性を死亡させる事件が相次いだことで、米国内に波紋が拡大。全米で暴動や抗議運動が起こる事態に発展し、刑事司法制度のあり方について疑問を投げかける声が強まっている。

事態を憂慮しているのは米国人だけではない。国連はこのほど、拷問禁止委員会の報告書という形で米国の現状に警鐘を鳴らした。同委員会を管轄する国連人権高等弁務官は、ファーガソンでの1件について個別に論評するのは時期尚早だとしながらも、報告書内で、「武器を持たない黒人に対して警官が発砲したり、死に至るまで追い詰めたりする事例が頻発していることへの深い懸念」を表明している。

これをさらに掘り下げてみると、「深い懸念」という国連の外交的な表現には収まらない問題が浮かび上がる。

抗議のために地面に横たわる「ダイ・イン」を行う人々

米紙ウォールストリート・ジャーナルの調査により、警官による殺人の件数が、連邦統計において大幅に過少報告されている実態が明らかになったのである。

同紙は米国内105カ所の大規模警察署から得られたデータを分析。その結果、2007~12年に550件以上の警官による殺人が連邦レベルの記録から漏れていたことが判明した。同紙の総計によれば、警官による殺人は連邦捜査局(FBI)公式の統計よりも約45%多かったという。

米国の警察の大部分は警官による殺人について一切報告していないこともあり、過少報告の全貌をつかむのは難しい。だが、透明性が確保されている部分に限ってみても、警官によって命を奪われている層として少数派(マイノリティー)が偏って突出しているのは明らかだ。

調査報道機関プロバブリカによると、10~12年、若い黒人男性が警官に射殺された件数は白人男性の21倍に上ったという。また、麻薬関連の捜査についても、黒人の逮捕件数は白人の約3倍に上ることが、司法省によるものも含め各種調査により明らかになっている。麻薬使用率においては、人種間でこれほどの差はない。

こうした事態を受け、司法制度改革について提言する非営利組織センテンシング・プロジェクトは、次のような厳しい結論を導き出している。「人種的マイノリティーは白人の米国人より逮捕されやすく、ひとたび逮捕されると有罪判決を受ける確率が高い。そして有罪判決が下ると、より厳しい刑を言い渡されることが多い」

アフリカ系(黒人)米国人の男性は白人男性の6倍も収監されやすい。現在の傾向が続けば、生涯のうちに刑務所に収監される米国の黒人男性の割合は3人に1人に達する見通しだという。一方、刑務所に入る白人男性の割合は17人に1人だ。

同プロジェクトはむやみに人種差別の批判を加えているわけではない。本当の問題はむしろ、米国に司法制度が実質的に二分されていることだ。富裕層ための司法制度と貧困層のための司法制度の二つに分断されているのである。人種、階級、経済状況などさまざまな理由により、マイノリティーは「セカンドクラス」の司法制度に頼るほかないのが現状だ。

これは強い表現だが、あくまで事実は事実だ。ファーガソンとニューヨーク市の事件を受け、果たして司法制度が全ての米国人に平等に機能にしているのか、問い直さざるを得なくなるだろう。

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