中国で増える私立学校 従来型教育に不満も

中国では「高考」が人生を左右する?

2015.01.04 Sun posted at 17:44 JST

(CNN) 中国の全国大学統一入試「高考」は、同国の大半の若者にとって人生を左右する重要な試験だ。

高考で良い成績を取れば、一流大学進学の道が開かれ、最高水準の教育を受けたり、海外で働く機会を得られるだけでなく、エリート層との人脈も築ける。

世界で中国社会ほど人脈が物を言う社会はない。中国では人脈は「関係(グワンシー)」と呼ばれ、この「関係」構築は中国人のライフワークになっている。

この高考受験を逃すと、何年も家庭教師に教わったり、塾に通っても、一流大学進学の道は断たれ、地方大学への進学を余儀なくされる。

中国にいる限り避けては通れないこの高考のサイクルから逃れたいと願う若者にとっては海外留学も1つの選択肢だが、それが可能なのは数に限りがある奨学金を受けられる人か、親が裕福な人に限られる。

伝統的な中国の教育カリキュラムに対しては賛否両論

しかし、最近中国では、中流家庭の子どもたちを対象に、海外の大学への進学に有利な教育を行う私立学校が増えている。

過去10年間、次世代の子どもたちに海外で教育を受けさせるために中国ほど多額の資金をつぎ込んできた国は他にないだろう。国際教育研究所によると、米国で学ぶ中国人の数は、2004年の約6万人から2014年は27万4000人以上と、実に4倍以上に増えた。

今や米国で学ぶ外国人留学生全体に占める中国人学生の割合は約3分の1で、過去最高を記録している。

中国政府は海外留学を希望する学生を支援しているが、大半の学生は自費で留学しており、オンライン教育を含む教育産業はいまや数十億ドル規模になっている。多くの教育企業は公開会社で、中国では向こう3年間に新たにオンライン教育ブームが到来すると見られている。

中国の民間教育を求める動きは、増加しつつある中流家庭の民間教育に対する強い期待だけでなく、伝統に縛られた中国の教育カリキュラムに対する不満の高まりも反映している。

英語圏の学校に子どもを入学させるのも選択肢の1つに

「海外の教育システムを知っている人々は、中国の教育システムにいらだちを募らせている」と語るのは、ロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)で中国語を教えるミシェル・ホックス教授だ。

「中国の教育システムは暗記学習に大きな比重を置いている。授業でも反復に膨大な時間を費やし、創造力を重視しないことが多い」「そこでエリート層は、子どもを中国の私立学校や英語圏の学校に通わせるなど、他の選択肢を模索している。特に英国の全寮制学校は中国で大変評判がいい」(ホックス教授)

暗記学習を重視する中国の教育システムは一部の教科には有効だが、高考における英語重視の傾向や海外勤務、留学志向は依然として根強い、とホックス教授は指摘する。

中国では、地方の生徒は都会の生徒に比べ、英語に接する機会が少ないため、中国政府は昨年、地方と都会の条件を公平にするため、高考に占める英語の割合を減らした。しかし、300億元(約6000億円)規模を誇る中国の英語産業にはほとんど影響なかった。

中国の一部大手塾・予備校は、平均年収がわずか1万3000元(約25万円)の同国で、年間1万6000元(約31万円)もの授業料を取っている。それにも関わらず、中国の英語教育産業は、特に2008年の北京五輪以降、成長の一途をたどっている。

中国の英語教育産業は2008年の北京五輪以降、成長の一途をたどる

中国の英語教育最大手ニュー・オリエンタル・エデュケーション・アンド・テクノロジー・グループ(新東方教育科技集団)はニューヨーク証券取引所に上場しており、時価総額は44億ドル(約5300億円)に達している。

中国人は伝統的に教育に対し深い敬意を持っているが、中には中国の教育システムから脱落することに魅力を感じている人々もいる。

中国で1980年代以降に生まれた世代を代表し、政府批判を展開している韓寒(ハンハン)氏は高校中退後、その知名度を生かして、ブロガーや社会評論家として活躍している。

ホックス氏は、「韓寒氏が有名になったのは、彼が18歳の時、作文コンテストで優勝し、中国の一流大学の1つに無料で通える権利を得たにも関わらず、本人は興味ないと断り、『自分はこの教育システムが嫌いだ。自分は単に独立した作家になりたいだけ』と発言したためだ」とし、「彼はほぼ一夜にして有名人になった」と付け加えた。

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