北朝鮮の「暗殺」映画、劇場に行列

2014.12.26 Fri posted at 10:17 JST

ニューヨーク(CNNMoney) 北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)第1書記の暗殺を題材にしたソニー・ピクチャーズエンタテインメントの映画「ザ・インタビュー」が25日、米国の独立系映画館331館で公開された。上映館の前には観客が行列を作り、一部では前売り券が売り切れる超話題作となっている。

同作品は当初、全米3000あまりの映画館で上映される予定だったが、テロ予告を受けて大手映画館チェーンが軒並み公開を中止。ソニー・ピクチャーズもいったんは公開を見合わせると発表したが、表現の自由が脅かされるとの懸念からオバマ大統領にも批判され、一転、独立系の映画館での公開に踏み切った。

ロサンゼルスの映画館では主演俳優のセス・ローゲンが登場。「このような映画館と、あなた方のような観客がいなければ(上映は)実現しなかった」と語りかけた。

ニューヨーク市内の映画館前に行列したファンからは、同作品を観るのは表現の自由を守るための「愛国者の義務」だという声も。先頭に並んだ男性は「これは憲法を祝すもの。どんな意見でも表現できると見せつけることがとても大切だ」と話した。

作品そのものに対する論評はまちまちだが、北朝鮮はこの映画を「米国による戦争行為」と呼んで強く非難。ソニー・ピクチャーズに対する一連のサイバー攻撃は北朝鮮の仕業とする見方が広がった。

しかし映画館に対するテロ予告について、観客の男性は「信憑性のある脅迫とは思えない」と一蹴。映画ファンの間では不安よりもお祭りムードの方が大きい様子だった。

米連邦捜査局(FBI)や各地の警察は、映画館と連携して安全確保に当たっている。

カリフォルニア州パームデザートの映画館は、大手映画チェーンが公開中止を発表して以来、ずっとこの作品の上映を望んでいたという。経営者のスティーブ・メイソン氏は「独立系映画館に怖いものはない。私たちは映画への愛情を持ってやっている」「この映画であれ、どんなものであれ、上映をひるむことはない」と力を込めた。

ザ・インタビューは劇場公開に先立ち、24日からインターネットでも有料配信が始まっている。動画共有サイトの「ユーチューブ」と米グーグルの「グーグル・プレイ」では、25日午前の時点でトップの売り上げを記録した。特設サイトを運営するカーネル社も、リリース直後から「ものすごい需要」があるとしている。

一方で、ファイル共有サイトでは海賊版も流通し始めた。米紙ニューヨーク・タイムズによれば、中国語で「金正恩暗殺」のサブタイトルを付けた海賊版も出回っているという。

ソニー・ピクチャーズのマイケル・リントン最高経営責任者(CEO)は従業員向けのビデオメッセージで、「この映画は我々の映画制作者と表現の自由への貢献の証だ」「ここに至るまでの道のりは予想外だったが、我々の闘いが無意味でなかったこと、そしてサイバー犯罪集団が我々を黙らせることができなかったことを誇りに思う」と語った。

同氏はさらに「リリースの拡大に向けてパートナーやプラットフォームを探し続ける」と述べており、今後映画館大手や動画配信大手の米ネットフリックスで公開される可能性もある。

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