衆院選きょう公示――安倍首相の「賭け」の行方は

衆議院選挙が2日に公示された

2014.12.02 Tue posted at 18:30 JST

(CNN) 安倍晋三首相が自身の経済政策「アベノミクス」などの是非を問う衆議院選挙(定数475議席)は、2日に公示された。14日の投票日に向け、選挙戦の本番がスタートした。

安倍首相は2012年の就任以来、アベノミクスの「3本の矢」として金融緩和と財政出動、成長戦略を掲げ、政権への評価をかけて実現を図ってきた。

首相は衆院選をアベノミクスへの信任投票と位置付けている。先月21日の衆院解散に当たり、「アベノミクスを前に進めるのか、止めてしまうのか、それを問う選挙だ」と語った。

これに対して中小・零細企業からは冷やかな声が上がっている。横浜市で青果店を営む男性は最近、店の照明の一部を落とすことにした。この1年で電気代が3割も上がり、顧客の購買意欲に改善の兆しは見えない。「大企業から金がしたたり落ちてくるというが、それはどこにあるというのか。地上で毎日一生懸命に働く者には届いていない」と、この男性は訴える。

最近実施された2件の世論調査では、有権者のうち半数近くが「焦点は経済と雇用」と答えた。

支持率は与党・自民党が30%前後に上り、最大野党・民主党は10~13%。自民党は1955年以降、ほぼずっと政権の座を占めてきた。民主党が政権を担当したのは09年からの3年間だけだ。

衆院はもともと16年いっぱい任期がある。295の現有議席を擁する自民党の安倍政権がなぜ早々と選挙に打って出るのか、その理由を巡って憶測が飛び交っている。

東京に本拠を置くコンサルティング会社、アジア・ストラテジーのキース・ヘンリー氏はCNNとのインタビューで、「不可解なタイミングだ」「これほど優位に立っている時になぜ選挙に踏み切るのか」と疑問を投げ掛けた。

世論調査でも、安倍首相がなんのために選挙を行うのか分からないという声や、選挙に費用を注ぐべきではないとする意見が過半数を占めている。

これについて、米テンプル大学日本校のジェフ・キングストン教授は、「首相は事態が悪化する前に地位を固めたいだけ」との見方を示す。野党の力が弱く混乱状態にある今は、2年間の任期延長を確保する絶好の機会ともいえる。「選挙をするのに最高のタイミングというのはないが、今が最もましなタイミングだ」と、同教授は指摘した。

衆院選では経済政策のほか、原子力発電所の再稼働や集団的自衛権、対中国政策、女性の地位向上などを巡る議論も焦点となる。

現地メディアによれば、衆院選の女性候補者は184人と、全体の約16%にとどまっている。安倍首相は女性の職場進出を長年支持してきたというが、子育てと仕事を両立させている既婚女性は依然として少数派だ。

首相にとって、平均的サラリーマンに経済政策の恩恵を実感させられるかどうかが選挙のカギとなる。しかし中小企業やその顧客は、今春の消費税引き上げとコスト増大に苦しんでいる。

首相は来年10月に予定されていた消費税の再引き上げを延期すると発表した。経済活性化へ向けて、3兆円規模の現金給付や減税も提案されている。だが果たして、有権者はそれで満足するだろうか。

東京都内にある老舗(しにせ)豆腐店の4代目店主の男性は、「アベノミクスは何の役にも立たない」と切り捨て、「生活は苦しくなるばかりだ」と訴えている。

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