金正日氏の元警護官、収容所の飢えと暴力を語る

故金正日氏の元警護官が強制収容所で過ごした5年間を語った

2014.11.18 Tue posted at 19:38 JST

ソウル(CNN) 両脚のすねに数十本の傷跡、わずかに残された歯――。北朝鮮の強制収容所で5年間を過ごした末に脱北を果たした李永国(イヨングク)さんが、当時の過酷な日々を振り返った。

李さんは故・金正日(キムジョンイル)総書記が北朝鮮の最高指導者となった1994年までの10年間、正日氏の警護官を務めていた。当時は忠実に仕えて円満退職したが、後に北朝鮮の外へ出てから初めて、正日氏が独裁者だったことをはっきりと認識した。

李さんは退職後に韓国への脱出を試みたものの中国で拘束され、政治犯を収容する耀徳(ヨドク)強制収容所へ送られた。初めて足を踏み入れた時、収容者たちの骸骨(がいこつ)のような姿に驚いたことを、今も覚えているという。

「食べ物はほとんど与えられなかった。さらにひどかったのは、絶えず殴られ続けたことだ。毎週だれかが処刑され、その現場を見ることを強制された。精神的に強くなければやっていけない」と、李さんは語る。入れ歯を外すと、わずかに残ったぼろぼろの歯。ライフル銃の台尻で殴られ、片目の視力を失った。

故金正日氏(中央)の元警護官は北朝鮮指導部を国民に対する罪に問うべきだと主張

模範囚として5年で釈放されるまでの間に、李さんの体重はほぼ半減した。収容者たちは看守に命令されなければ頭を上げる力もないほど弱っていた。その日の肉体労働を終わらせなければ食事は与えられない。飢えのために腹だけが異様に膨れ上がり、顔や手足が骸骨のようになっていく。

死者の遺体は「花園」と呼ばれる集団墓地へ運ばれた。「花園には何千人、何万人もの遺体が並んでいた。死んだばかりでまだ体液が流れ出ている遺体を運び、看守の言う場所に埋める作業もさせられた」という。

国連では今週、北朝鮮の人権問題を国際刑事裁判所(ICC)に付託するよう促す欧州、日本提案の決議案が、人権問題担当の第3委員会で採決にかけられる。委員会を通過すれば、12月の国連総会で採決が行われる。これに対して北朝鮮は、政治犯収容所や人権侵害問題は存在しないとの立場を貫いている。

李さんは、北朝鮮指導部を国民に対する罪に問うべきだと主張する。警護官時代、正日氏の3男で当時6~7歳だった金正恩(キムジョンウン)第1書記に何度も会ったことがある。その正恩氏をICCに訴えることによって耀徳収容所のような施設をなくすことが、李さんの願いだという。

金正日氏の元警護官にインタビュー

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