州政府の強制隔離を連邦政府が懸念 「人権侵害」の声も エボラ出血熱

ケイシー・ヒコックスさんがCNNの電話取材に応じた

2014.10.27 Mon posted at 11:49 JST

(CNN) エボラ出血熱の流行地域から帰国した医療従事者の強制隔離を義務付けた米ニュージャージー州の方針に基づき、シエラレオネでエボラ患者の治療に当たった看護師が同州で強制隔離された。この看護師は26日、「基本的人権を侵害された」と訴えて同州のクリスティー知事を批判。米政府高官によると、ホワイトハウスも同知事に懸念を伝えた。

隔離された看護師のケイシー・ヒコックスさんは、24日午後にニューアーク国際空港に到着し、病院で7時間待たされた後に、ニューアークの大学病院内にある隔離テントに収容された。本人によれば、2度の検査はいずれも陰性で、症状も出ていないという。

26日にCNNの電話取材に応じたヒコックスさんは、強制隔離措置について「対策を強化することなく、よく考えもせずに隔離するのは本末転倒」だと批判した。

これに先立ちクリスティー知事は25日の記者会見で、「彼女には気の毒だが、症状があって具合が悪い人たちが公衆に混じる不安の方が大きい」と発言。翌日のフォックスニュースの番組でも、強制隔離の方針について考え直すつもりはないと言明していた。

ニュージャージー州のクリスティー知事。強制隔離の方針は変えないという

知事のこの発言についてヒコックスさんは、「知事は医師ではなく、私のことを見てもいない。私に症状など出ていない」と反発している。

ヒコックスさんの弁護士は26日、裁判所に審理の開始を申し立てる意向を明らかにした。

米政権高官が同日CNNに語ったところでは、西アフリカからの帰国者の強制隔離を命じたクリスティー知事とニューヨーク州のクオモ知事に対し、政府は「科学的根拠のない政策は、意図せぬ結果として西アフリカでのエボラとの戦いに影響を及ぼしかねない」と懸念を伝えたという。

これに対してクリスティー知事の広報は、隔離措置についてホワイトハウスから知事に連絡はなかったとしている。

一方、ニューヨーク州のクオモ知事は26日夜に発表した声明で、患者と接触して帰国した人には「21日間の自宅待機を求める」と述べ、大幅に態度を軟化させた。この期間中に雇用主から給与が支払われない場合は政府が負担するとも表明した。

隔離されているテントのイメージ=ケイシー・ヒコックスさん提供

オバマ大統領は同日、エボラ対策チームと対応を協議した。ホワイトハウスの声明によると、大統領はこの中で、政治的対応は医療科学を根拠としなければならないと述べ、医療従事者の意欲を不必要にそぐことがあってはならないと強調した。

ニューヨーク市のデブラシオ市長も同日夕の記者会見で、ヒコックスさんの強制隔離は不適切だったとの見方を示し、「英雄が礼儀を欠く待遇を受けた」と批判した。

ヒコックスさんは、隔離テントに手荷物の持ち込みは認められず、紙製の着替えのみを与えられて、部屋にはシャワーも流せるトイレもないと説明。テレビも読むものもなく、ただ壁を眺めているしかない状況だと語っていた。

このような処遇を受けるのであれば、エボラ患者を助けるため西アフリカに行こうという医療従事者の意欲がそがれかなねいとも危機感を示した。

病院は26日になって、ヒコックスさんがコンピューターや自分の携帯電話を使えるようになり、希望する食事も届けられたと発表した。

「私は元気」 強制隔離の看護師が訴え

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