(CNN) イラク北部のクルド人自治区当局者と地元メディアによると、北部一帯で20日、イスラム過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」が攻勢を強め、約15カ所をほぼ同時に攻撃した。
戦略的要衝のモスルダムや、クルド人少数宗派ヤジディ教徒の神殿があるシンジャル山も攻撃の対象となった。
クルド人自治区の治安当局者がCNNに語ったところによると、神殿のある村ではクルド人民兵組織ペシュメルガがISISを撃退し、数人の戦闘員を殺害した。ISIS側は近くにある2つの村を占拠したものの、これらの村は今年8月のISISの攻撃で住民が避難し、すでに無人状態となっている。
同当局者は「イラク北部の各地でISIS戦闘員が多数死亡した」と強調し、これらの村で近いうちに米軍主導の空爆も実施されるだろうと述べた。
ペシュメルガの報道官によると、モスルダムを取り囲む緩衝地帯沿いでは爆発物を積んだ軍のトラックがISISに乗っ取られ、検問所に突っ込んだ。治安要員6人が死亡し、7人が重体となった。
ISISはこれとほぼ同時にダム近くのニネベ渓谷でも攻撃を仕掛けたが、ペシュメルガが欧米の武器を使って撃退したという。
別の治安当局者は匿名を条件に、ダム周辺には多数のペシュメルガ部隊が展開しているため、ISISにダムを掌握される可能性は低いと語った。
匿名の治安当局高官もまた、ペシュメルガが20日、各地でISIS戦闘員を殺害し、十数カ所に及んだ攻撃をほぼはね返したと報告した。
一方、シリア北部のクルド人地域では、ISISに包囲されたトルコ国境の街、アインアルアラブ(クルド名コバニ)に19日夜、米軍輸送機が武器や弾薬、医薬品を投下した。
アインアルアラブではクルド人部隊が街の7割を死守しているが、連日ISISからの砲撃を受け、外部から孤立した状態が続く。すでに数万人の住民がトルコ側へ避難した。
トルコのチャブシオール外相は20日、ペシュメルガの援軍がトルコ領を通ってアインアルアラブへ向かうことを認めると発表した。
ただ、トルコは国内のクルド人武装勢力とシリアのクルド人部隊とのつながりに強い警戒感を示してきた。チャブシオール外相は同日、シリアのクルド人民兵を統率する政治組織、民主統一党(PYD)について「シリアの領土を支配しようとしている点でISISと同様の脅威だ」と述べた。エルドアン大統領もアインアルアラブの民兵を「テロリスト」と呼び、米軍が武器を供与するのは「不適切」との見方を示していた。
米、コバニで武器投下 クルド人を支援