経営幹部はコンピューター? 仕事自動化の影響は

将来は上司がロボットということも?

2014.12.31 Wed posted at 16:08 JST

(CNN) 将来、全ての仕事がロボットに代行されるようになるだろうとは、よく言われることだ。ただ、経営者の職もロボットの脅威にさらされるとまでは、通常、想定されていない。

香港のベンチャーキャピタル、ディープ・ナレッジ・ベンチャーズ(DKV)はこのほど、コンピューターアルゴリズムを同社の取締役会の役員に指名した。投資戦略を決定するにあたり、機械に人間と「同等の議決権」を与えたのは、史上初だという。

DKVは、高齢者治療や再生医療に投資している企業だ。投資先を決めるにあたり、アルゴリズムを利用して、医療金融の世界の潮流を分析している。

同社の共同経営者であるドミトリー・カミンスキー氏は、アルゴリズムを役員に指名した背景として、資産評価の大部分を自動化したり、人間には読み取れない膨大な過去のデータを分析したりするソフトウエアに魅力を感じてきたと説明する。

こうした動きは、DKV以外のベンチャーキャピタルや投資ファンドにも波及していくかもしれない。

もっとも、経営陣のロボット化には懐疑的な向きもある。機械学習を専門とする英オックスフォード大学の准教授、マイケル・オズボーン氏は昨年、700種類に及ぶ職業について、自動化のされやすさを検証した。

この研究の結果、今後20年、米国内の職業のうち47%が自動化される危険にあると判明する一方で、経営の仕事は最も自動化されにくい職種であることも明らかになった。

役員の仕事の本質は、他の取締役会のメンバーと協議し、意見をすり合わせていくことであり、機械には難しいためだ。

DKVのアルゴリズムに可能なのはあくまで、取締役会における議論のたたき台を提出するところまでであり、その先の意志決定は、人間の直感的な判断に依存する部分が大きい。

そのため、オズボーン氏は「アルゴリズムが役員に就任したとまで表現するのは、少し無理がある」との見方を示す。

オズボーン氏は自動化されやすい職種として、電話営業、税金関係の書類作成、保険査定など、技能水準の低い仕事を挙げる。近年、雇用が増加傾向にあった販売業やサービス業も、ネット通販やタブレットの普及により危うくなっているという。

一方、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究室はこのほど、工場ラインにおける組み立て作業を対象に、ロボットと人間でどのように裁量を分担すれば良いのかを検証した。

ロボットのほうが好評な仕事もあるという

この結果、ロボットが人間に仕事を割りふる方が効率的であり、労働者の間でも好評なことが判明した。

気になるのは、ロボット化が雇用に及ぼす影響だが、これについては、専門家の間でも意見が分かれている。

オズボーン氏は「歴史的には、テクノロジーの変化によって失業が大幅に増大したことはない」と指摘。テクノロジーの普及により消滅する仕事がある一方で、新たな雇用が創出される可能性もあるとの見方を示す。

例えば、20世紀初頭に米国の労働者の40%を占めていた農業関連の仕事は、20世紀末には2%以下となった。激減の要因はもっぱらテクノロジーの変化にあるが、失業率はこの間、おおむね5%付近で安定的に推移してきた。新技術に応じて新たな雇用が創出されたためだ。

オズボーン氏は、近年でも、5年前や10年前には想像もつかなかったような仕事が生まれていると指摘。テクノロジーが新たな雇用につながる可能性があるという「比較的楽観的な」見方を示した。

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