(CNN) 2014年の世界長者番付で2位となったメキシコの富豪カルロス・スリム氏が7月、「週3日勤務」を提言して話題になった。同じ頃、米検索大手グーグルの共同創業者ラリー・ペイジ氏もやはり、勤務時間の短縮について、口にしていた。
世界の大金持ちがそろって短時間勤務を提唱するのはなぜだろう。彼らの方法論や目標には違いがある。しかし、長時間労働が心身の健康に悪いという点は正しい。しかも、経済にも悪影響を及ぼすようだ。
米国人の仕事中毒ぶりは有名だ。米国は先進国の中でもとりわけ労働時間が長く、休暇が少ないことで知られる。
また、労働者の有給休暇を取る権利が保障されていない唯一の先進国でもある。このため、23%の米国人は、無給で休暇を取ることを余儀なくされている。ある調査によると、有給休暇が与えられている場合であっても、認められた日数の半分しか消化しないのが平均だという。
対照的に、欧州ではワークライフバランス(仕事と生活の両立)が信じられている。欧州各国では、少なくとも年20日の有給休暇を取る権利が保障されている。国によっては、25日から30日の場合もある。
一方、米国人と並んで仕事中毒なのが韓国人だ。
2012年、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で労働時間が最長だったのは、韓国人だった。
ただ、長時間労働が生産性に結びついているわけではない。むしろ、韓国人の生産性は低く、OECD平均の3分の2に過ぎなかった。あまりに働き過ぎた結果、睡眠時間削減という意味でもOECD最高になってしまったのだろうか。ソウル市ではこの夏、生産性向上のため、職員に昼寝を奨励する事態にまでなった。
現在は一般的に、発展途上国の労働者のほうが、科学技術の恩恵を受けることが少ないために、より裕福な国々の労働者よりも生産性が低い。そのため、アジアの労働者は歴史的にみて、米国の労働者よりも生産性が低かった。しかし、その差は埋まりつつある。
一方で、ドイツ人の労働時間はギリシャ人よりも年600時間ほど短いが、生産性では70%上回っている。
こうしたなか、米国人は、長時間労働に行いつつも比較的高い生産性を維持しているという意味で、例外的な存在だ。
ただ、もう少しリラックスして充電する時間を増やしてもいいのではないか。
休暇の取得は、職場にも良い効果をもたらす。会計監査大手のアーンスト・アンド・ヤングが自社の社員を対象に調べたところによると、休暇を10時間増やすごとに、仕事のパフォーマンスを示す数値は8%上昇した。
さらに、経済全体への波及効果もある。米旅行業協会(USTA)が依頼した調査によると、米国人が与えられた休暇をすべて消化すれば、売り上げは1600億ドル増大する。
これは旅行業界に限ったことではなく、全セクターを通じての話だ。さらに、給与所得は520億ドル、雇用は120万件ほど増大するという。
従って、有給休暇を与えられている労働者は、きちんと休みを取るべきだろう。それが米国人としての務めだ。