NATO、「即応部隊」創設で合意 ウクライナ情勢で危機感

NATOのラスムセン事務総長

2014.09.06 Sat posted at 15:14 JST

英ウェールズ・ニューポート(CNN) 北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は5日、英ニューポートで最終日を迎え、ウクライナ危機やイスラム教過激派が台頭するイラク情勢などを踏まえ、数日間内に該当地域に出動可能な「即応部隊」の創設で合意した。

NATOのラスムセン事務総長が明らかにした。同部隊の規模は、数千人の地上部隊、空海戦力や特殊部隊から成る。司令部や余剰の装備品の保管施設は東欧諸国に置く。

同事務総長は、部隊創設についてNATOが全ての同盟国を常時、防衛するとの決意を示す明確なメッセージであると強調。同時に、潜在的な侵略国をけん制する明快なメッセージにもなると主張した。

ロシアによるウクライナのクリミア半島併合やウクライナ東部での軍事介入の疑惑を受け、ポーランドやバルト海諸国などはロシアに対する警戒心が高まっている。これを受け、今回のNATO首脳会議ではウクライナ問題とイラクなどで勢力を拡大するイスラム過激派への対応策が中心議題となった。

即応部隊の創設合意はポーランドなどに一応の安心感を与えるとみられるが、米政府当局者は、NATOの即応部隊の任務は防衛的な性格を帯び、ロシアを挑発するものではないとも説明した。英国のキャメロン首相は同国は部隊に将兵3500人を派遣する用意があると明かした。

ウクライナ東部での政府軍と親ロシア派勢力の戦闘が終結に向かうか=ウクライナ政府提供

ラスムセン事務総長はイスラム教スンニ派の過激派「イスラム国(IS)」が台頭するイラク情勢について、NATO加盟国はイラク政府が求めるなら、過激派との戦いを手助ける準備があると強調。ただ、記者団に支援の詳細を質され、イラクの防衛能力の構築を考慮する用意があるとのみ答えた。

この関連でNATO加盟国のカナダ首相府は5日、IS掃討でイラク政府に助言する数十人規模の兵士を派遣すると発表した。米国は既にイラクに軍事顧問団を送り、IS駆逐の作戦に当たらせている。

同事務総長によると、首脳会議ではまた、加盟国が今後10年間で国防費増大に努力することでも合意した。国防費は国内総生産(GDP)の2%を目標とし、10年間で支出額の2割を装備品の調達などに充てることを想定している。

この合意はウクライナ情勢をにらんだもので、ロシアの軍事費は過去5年で50%増加。一方、NATO諸国は平均で20%目減りした。

オバマ米大統領はNATO首脳会議の閉幕後、「ロシアによるウクライナ侵攻は健全、自由で平和状態にあるべきとする欧州の未来図を脅かしている」と主張。その上でロシアが反発するウクライナのNATO加盟問題に触れ、「同盟への加入の機会は我々の高い基準を満たす諸国には常に開かれている」と続けた。

NATO首脳会議が開催

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