緊張高まる日中関係、防衛白書めぐり主張の応酬

2014.10.12 Sun posted at 17:27 JST

(CNN) 日本の防衛省が8月に2014年版の防衛白書を発表したが、中国との関係改善にはほとんど役立たなかったようだ。白書の発表を受け、中国政府は、日本が軍備拡張の口実として「中国脅威論」を利用していると強く反発している。

白書への中国側の反発の背景には、日本政府が近年、「安全保障環境が厳しさを増している」として、防衛費を拡大させている経緯がある。2014年度の日本の防衛予算は約4兆9000億円と前年度比で約3%増大した。緊迫する朝鮮半島情勢や東シナ海における領土問題が主な懸念材料とされている。

安倍晋三首相の下、日本は自国の防衛態勢についてより積極的な姿勢を見せており、今後4年間にわたってさらに軍備を増強していくものとみられる。大型ヘリ空母や対潜哨戒機、無人偵察機、水陸両用部隊などを拡充するほか、米国製の第5世代最新鋭ステルス戦闘機F35を2018年から導入する予定だ。

日本は地域安全保障において同盟国である米国からの恩恵を大きく受けており、武器購入についても米国の大口顧客となっている。ただ、潜水艦など一部兵器については自国で開発している。

一方、中国の2014年の防衛費は約2000億ドル(約20兆円)となる見込み。中国は一部の武器を主にロシアから購入しているが、自国での武器開発も行っている。2012年には中国初となる空母を就役させたほか、2020年までにもう2隻の空母を建造する計画とみられている。また、自前の第5世代ステルス戦闘機J20を開発中であり、2018年にも実戦配備される見通しとなっている。

白書では、中国の船舶や航空機が東シナ海や南シナ海の係争地域で「危険な行為」を取っており、「不測の事態」を招きかねないと指摘。中国の「広範かつ急速な」軍事力強化に懸念を示したほか、軍事に関する透明性を高めるよう、中国側に要望した。

一方、中国国防省はすぐに非難の声明を発表。日本側は「事実を顧みず」、中国の軍事的発展に対して「いわれなき非難を加えている」と反論している。

両国の空軍力を比較すると、量においては中国が既に日本を上回っていると言える。中国は、ロシア製の最新鋭戦闘機Su27やSu30に加え、自国で開発したJ10、J11、J16を多数保有している。他方、日本が保有する戦闘機は約260機で、約200機のF15が主力だ。

質においては今のところ、在日米軍と緊密に連携している日本側に分があるが、中国のJ20と日本のF35がそれぞれ円滑に投入されるかどうかで、2018年には中国が優位に立っている可能性もある。

米国からみると、国防費を巡る今回の日中の摩擦は、東アジア地域の緊張をまたしても増幅させた格好になる。オバマ米政権は中国との関係深化を進める一方で、在日米軍基地がこの地域の重要な拠点であることにも留意している。また、米国にとっては武器の輸出先としても、アジア太平洋地域は重要な市場だ。

スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の調べによれば、2013年の世界の軍事費総計は約1兆7500億ドル(約175兆円)となっている。トップは6400億ドルの米国であり、中国が1880億ドルで2位。日本は8位となっている。

日中間には、東シナ海の尖閣諸島(中国名・釣魚島)を巡る紛争があり、近年、空中や海上でたびたび衝突が見られるようになった。

白書では、「このような中国の活動には、わが国領海への侵入や領空の侵犯のほか、火器管制レーダーの照射や戦闘機による自衛隊機への異常な接近、『東シナ海防空識別区』の設定といった公海上空における飛行の自由を妨げるような動きを含め、不測の事態を招きかねない危険な行為をともなうもの」がみられると指摘している。

これに対し、中国外務省の報道官は「東シナ海防空識別圏の設定は中国側の正当な権利であり、国際法と国際的慣例に沿ったもの」と述べ、中国の海洋活動は「なんら非難されるものではない」と反論している。

領土問題をめぐっては、竹島(韓国名・独島)の領有権を巡って日本と対立する韓国からも、防衛白書への批判の声が出ている。韓国外務省は、白書が竹島を日本固有の領土と記載したことに関して、「不当な主張」と批判、記述の撤回を求める声明を発表した。

他方、中国の側でも、南シナ海のさまざまな島をめぐって東南アジア各国と領土紛争を抱えている。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。