英夫婦、重病の息子を病院から連れ出し スペインで逮捕

英国人夫婦から重病の息子を病院から連れ出した=ATLAS TV提供

2014.09.02 Tue posted at 18:24 JST

(CNN) 脳腫瘍(しゅよう)の息子の入院先で先端医療を拒否されたとして、英南部サウサンプトンの病院から息子を無断で連れ出し、国際手配されていた英国人の夫婦が、スペイン南部マラガ近郊で逮捕された。夫婦は1日、マドリードの法廷で「帰国する意思はない」と明言した。

英国人のブレット・キング容疑者と妻のナグメ容疑者は、脳腫瘍の治療で入院中だった息子のアーシャ君(5)を医師の許可なく連れ出し、保護者としての責任を拒否した疑いをかけられている。

アーシャ君が行方不明になったとのニュースは世界各地に流れた。ニュースを見ていたマラガのホテル従業員が、アーシャ君らを連れた夫婦に気づいて通報した。両容疑者は収監され、アーシャ君はマラガ市内の病院に保護された。

ブレット容疑者は逮捕直前に撮影したビデオで、「息子のために国外での陽子線治療を希望したが、担当医に拒否された」と話している。費用は自分で負担すると申し出たにもかかわらず、アーシャ君の腫瘍には効果がないとはねつけられたという。しかしインターネットで調べると、米国やフランス、スイスのサイトには陽子線治療が効くという情報が書かれていた。

夫婦の弁護士によると、同容疑者はアーシャ君に治療を受けさせるため、一家がマラガに所有している家を売却しようと思い立ち、妻と6人の子どもたちを連れて同市へ向かったという。

アーシャ・キング君の様子を撮影した動画を兄がインターネットに投稿=Facebookから

アーシャ君が入院していたサウサンプトン大学病院の責任者は「キング家との関係が悪化し、信頼を得られなくなってしまったことは非常に残念だ」としたうえで、「アーシャ君のためにどうするのが良いかを第一に考えている」と強調した。

アーシャ君の兄は、一家がアーシャ君を看護しながら移動する様子を撮影し、動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開した。ビデオには「病院から連れ出しても虐待してはいないことが、この映像から分かるはずだ」との字幕が付いている。

裁判官は72時間以内に不法行為があったかどうかの判断を下す。不法とされた場合は、両被告を強制送還する手続きが始まるという。

陽子線治療は放射線治療の一種だが、がんの病巣だけを狙った照射が可能で、周囲の組織への影響は最小限にとどまることが特長とされる。ただ、この治療を受けられる病院は米国でも限られている。

ケネディ元大統領の弟で上院議員を長年務めたエドワード・ケネディ氏は2008年、マサチューセッツ総合病院で脳腫瘍の手術と陽子線治療を受けたが、1年後に亡くなった。

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