民族融和を担うウイグルのプリンセス、中国当局がアニメ企画

2014.08.27 Wed posted at 14:34 JST

(CNN) 中国北西部の新疆ウイグル自治区で続くウイグル族と漢族の対立を文化面から和らげようと、当局がウイグル族のプリンセスを主人公にした3Dアニメーション「天香公主」の制作に乗り出した。

主人公はウイグル族のプリンセス、イパル・ハン。18世紀の清朝の乾隆帝が、新疆ウイグル自治区のカシガルに住む少女の美しさと甘い香りに魅せられ、2人は恋に落ちて少女が乾隆帝の妻になったという伝説を題材にしている。

新疆ウイグル自治区の当局は、民族間の調和を図り、ウイグル族の伝説の認知度を高めるキャンペーンの一環としてこのプロジェクトを企画。制作は深センの企業が手がけ、2015年にテレビ番組を放映、翌年には映画化する予定だ。

制作会社の幹部は主人公の少女について、「文化を横断する対話に貢献してきた存在」と指摘する。今年6月には新疆を訪れて自然の美しさと豊かな文化に感銘を受けたといい、「この文化の普及を手助けしたい」と意気込む。

ただ、ウイグル族と漢族の両方の視聴者の心をつかむためには困難も予想される。

中国の英字紙グローバル・タイムズによれば、主題歌の作曲者を選ぶだけでも1年以上を要した。両方の民族の伝統に詳しい作曲家がなかなか見つからなかったという。

さらに、ウイグル族の少女の物語には別の解釈もある。中国国民の多くは国家統一の象徴と受け止めているこの物語だが、ウイグル族の現代版の解釈では、少女は無理やり妻にさせられ、皇帝との関係を頑なに拒んで皇帝の母に殺された人物として描かれる。

制作会社幹部は、この作品を楽しんでもらえる内容にしたいと語る一方、「政治的必要性」も考慮すると話し、「漢族とウイグル族の友好関係の再認識は、子どもたちを再教育し、文化の違いの受容について教えるうえでとても重要だ」と強調した。

作品は海外への進出も目指し、特にイスラム地域での放映を計画しているという。

新疆ウイグル自治区では爆弾事件や殺傷事件が相次ぎ、中国政府が5月にテロ撲滅対策に乗り出した。摘発強化策はテロの罪に問われた人物の死刑執行から、イスラム教徒の服装禁止まで多方面にわたる。

同時にソフトパワーも重視する意向で、新疆文化局の幹部はグローバル・タイムズに対し、「これは思想の領域での戦争のようなもの。前向きなエネルギーを放たなければ、相手に戦場を制される」と話している。

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