バグダッド(CNN) イラク北部でイスラム教シーア派の少数民族トルクメン人の町が武装勢力に包囲され、住民が危機に直面しているとして、国連が懸念を表明した。
北部の町アメルリは2カ月以上前からスンニ派過激派組織「イスラム国(IS)」に包囲され、1万7000人超、約5000世帯の住民が電力や食料の供給を絶たれて深刻な状況に陥っている。
国連のムラデノフ事務総長特別代表(イラク担当)は、住民らが「言葉で表現できないほど」の苦難を強いられていると警告。「大量殺人を阻止するためにはただちに行動を起こす必要がある」と呼び掛け、イラク政府に包囲解除への努力を求めた。
イラクのシーア派最高権威、シスタニ師も政府に対し、包囲解除と支援物資の投下を要請した。
トルクメン人支援団体の責任者がCNNに語ったところによると、現地では70日間に及ぶ包囲で停電が続いている。医薬品が底をつき、水道も止まって井戸水に頼るしかない。
周囲にある約30カ所の村落はISの支配下にあり、政府のヘリコプターによる救出や物資投下だけが頼りだが、食料を運ぶヘリは過去10日間で1回しか到達していない。ISから攻撃を受ける恐れがあるため、この地域にヘリを飛ばすのは非常に困難な状況だという。
イラクの新首相に指名されているアバディ国民議会(国会)副議長は、抵抗を続けるアメルリの住民らを「英雄的」とたたえ、IS打倒への第一歩になるとの見方を示した。
イラク北部では、ISに村を包囲されたクルド系少数宗派ヤジディ教徒が山間部へ逃げ込んだまま孤立し、米軍が「虐殺を防ぐため」として空爆に踏み切った経緯がある。
一方、首都バグダッドの中心部では23日、情報省の本部を狙った自爆テロがあり、少なくとも4人が死亡、35人が負傷した。
北部のクルド人自治区に隣接するキルクール市内では同日、車に仕掛けた爆弾3発と路肩爆弾1発による連続テロが発生し、警察によると少なくとも20人が死亡、113人が負傷した。車爆弾の現場2カ所は、クルド人部隊ペシュメルガの拠点の工事現場だった。
ISは22日、北東部ジャラウラの戦闘でメンバー50人が死亡したことを受け、ペシュメルガへの報復を宣言していた。
少数民族の町が孤立 イラク