転換期迎えたジブリ 鈴木敏夫氏が今後を語る

宮崎駿監督の引退表明でスタジオジブリは転換期に

2014.08.11 Mon posted at 15:52 JST

(CNN) 日本のアニメーション映画を代表する制作会社、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーはこのほど、同社の「将来」を考え直す必要があると話した。宮崎駿監督の引退表明を受け、ジブリ・アニメは転換期を迎えているようだ。

青年が空飛ぶ竜になり、獣が巨大な神になり、魚が女の子に姿を変える――。数々の名作と同じように、今度はジブリという企業自体が変身することになるかもしれない。

鈴木氏は先週、国内テレビ局とのインタビューで、同社がアニメの「作り方」を変えることになるとの見通しを示した。

同氏はまた、昨年引退を表明した宮崎監督が再び製作に意欲を示していることを明かした。復帰作としては、ジブリ美術館で公開する短編アニメなどが考えられる。

このインタビューに先立ち、鈴木氏はジブリがアニメ制作を「小休止する」と発言。インターネット上などで「スタジオ解散か」と騒ぎになっていた。

同社はCNNの取材に対し、「今後については何も正式に決定していない」と説明した。

だが、約30年に及んだ宮崎体制が幕を閉じた今、ジブリの将来が揺らいでいることは確かだ。

コンピューターグラフィックス(CG)アニメが全盛を迎える時代の流れの中で、スタジオジブリは手描きへのこだわりを貫いてきた。「となりのトトロ」(1988年)から「風立ちぬ」(2013年)に至るまで、ジブリのアニメは丁寧に描き込まれた登場人物と背景、その自然な動きが特長となっている。

ジブリ美術館にはジブリ作品に登場するキャラクターの像などがある=DANIEL FANDINO氏提供

アニメ文化の研究者、ヘレン・マッカーシー氏によれば、手描きの技をここまで磨き上げることができたのは、同社が同じアニメーターを長年雇い続けてきたからだ。多くのスタジオでは、作品ごとの短期契約でスタッフを採用するのが通例となっている。

しかしジブリ専属スタッフの高齢化とともに、次世代へのバトンタッチが必要になってきた。

ジブリの2大監督といわれた宮崎氏と高畑勲氏はともに70代だ。「ジブリはバイオリンの名器のようなもの。それを弾いてきた2人の名演奏家が引退したら、次の演奏家が弾き続けなければならない。楽器のメンテナンスには高額の費用がかかる」と、マッカーシー氏は話す。

ジブリでは宮崎氏の長男、吾朗氏(47)、米林宏昌氏(41)の両若手監督が制作を続けていくという。しかし、両氏の作品の興行成績は今のところ、駿氏の作品に遠く及ばない。

駿氏の「千と千尋の神隠し」(01年)は300億円超の興行収入を記録し、米アカデミー賞の長編アニメ賞を受賞した。引退作の「風立ちぬ」も興行収入120億円のヒットとなった。

これに対して、米林氏の新作「思い出のマーニー」の興行収入は30億円台にとどまる見通し。吾朗氏の「コクリコ坂から」(11年)は約45億円だった。

鈴木氏はインタビューで「夢の会社を作りたかった」「それがある程度実現できた」と振り返ったうえで、今後の方針を考える時期がやってきたとの認識を示した。

マッカーシー氏はジブリの手描きアニメという伝統について、「それに伴う高いコストや手描きのスタッフの必要性を観客が受け入れ続ける限り存続できるだろう」と話している。

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