時代を超えた美、月面図の歴史をたどる

NASAの月探査機グレイルの観測データに基づく月面の重力分布図、2012年=NASA/JPL-CALTECH/CSM提供

2014.08.09 Sat posted at 09:00 JST

(CNN) 人類は太古の昔から、空に輝く月の姿を描き続けてきた。だが月表面の様子を地図に描くようになったのは、望遠鏡が開発された400年ほど前のことだ。

歴史に残る美しい月面図とそれを描いた人びとを紹介する。

ガリレオ・ガリレイ、1610年

ガリレオは望遠鏡で見た月のスケッチを史上初めて出版した人物だ。

月のでこぼこした地表を描いた図はこの時代としては画期的で、論争を呼ぶものだった。天体はすべて表面がなめらかで完全な球状だとするアリストテレスの説が当時は広く信じられていた。

ジョバンニ・バッティスタ・リッチョーリ、1651年

イエズス会士で天文学者だったリッチョーリは、月面上のさまざまな地形に名を付けた。名称の大半は月に関係のある天文学者や哲学者にちなんだもので、今日でも使用されているものが多い。月面図自体は弟子で科学者のフランチェスコ・マリア・グリマルディが描いた。

名称は北から南に、人物の生きた時代順に付けられた。また、月面の低く平らな土地の広がりを「海」と呼んだのもリッチョーリが初めてだった。

ジョン・ラッセル、1797年ごろ

ジョン・ラッセルは英国の著名な肖像画家だが、彼が遺した不朽の名作と言えば30年間にわたる月の観察の集大成となるこの月球儀だろう。

表面の微妙で細かな描写は、ラッセルが芸術性と同様に正確さにも注力していたことを示している。

台座の上で揺れるのは、月が地球から観測した時に見えるかすかな振動運動を再現するためだ。小さな球は地球を表す。

ウィルヘルム・ベーアとヨハン・ハインリヒ・フォン・メドラー、1834~36年

ドイツ人天文学者2人の手による精密な月面図は1834~36年にかけて発表された。当時としては最も詳細で正確な月面図とされ、これを超える図は40年間登場しなかったという。

ウォルター・グッデーカー、1910年

縦横約180センチメートルの詳細な月面図は、じゅうたん製造会社の経営者でアマチュア天文家のグッデーカーが作成した。自宅の望遠鏡をのぞきながら、既存の月の写真なども参照して正確な図の作成に努めた。英天文協会の月部会の長を42年間務めた。

米地質調査所(USGS)、1979年

USGSがNASAと協力して月の地質図の作成を始めたのは1960年代のこと。最近では、火星の地質図の作成も行っている。

NASA、1996年

NASAの木星探査機ガリレオが1992年に撮影した15枚の月の画像を組み合わせたもの。赤色の部分は主に標高の高い地域、青やオレンジの色の箇所は大昔に噴火した火山の溶岩が流れた「月の海」の部分にあたる。濃い青の部分はオレンジ色の場所に比べ、土壌にチタンが多く含まれている。

NASA、1999年

月探査機ルナ・プロスペクターの観測データから作られた月面図。重力の違いによって色分けされており、赤いところが最も強い。ここは「マスコン」と呼ばれ、地中に重い物質が集積している場所だ。

NASA、2010年

月面上の5185個の大型クレーターを初めてすべて網羅した月面図。NASAの月探査機ルナ・リコネサンス・オービターが集めた膨大な計測データから、NASAとブラウン大学、マサチューセッツ工科大学の研究者が作成した。

国立天文台、国土地理院、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、2013年

国立天文台など3団体が共同して作成した月の地形図。赤色の部分は標高が高い。大きなクレーターの底の部分は青く、深いことがわかる。

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