強化進まぬ中国サッカー代表、まずは競技人口の増加から

サッカーの中国代表は最近、良い成績を収められずにいる

2014.09.07 Sun posted at 17:15 JST

香港(CNN) 13億人もの人口を抱える中国。膨大な国民の中から優秀な人材を11人選抜して戦えるサッカーチームを作るのは簡単なように思えるかもしれない。しかし、実際には、中国の代表チームは国際舞台で苦しい戦いを強いられている。

サッカー・ワールドカップ(W杯)本大会は2002年の日韓大会に参加したのが最初で最後、現在の中国代表チームは不調のどん底にある。13年6月には、若手中心のタイ代表とのホーム親善試合で1-5の大敗を喫し、国民の非難を浴びた。

そんな中国サッカー代表の苦戦の背景を探る。

しばしば問題とされるのは外国人指揮官だ。中国サッカー界では大金を投じて著名な外国人監督を招聘(しょうへい)することが多い。

スペインの名門レアル・マドリードで指揮を執った経験もあるアントニオ・カマーチョ氏が11年に中国代表監督に選ばれた際は、W杯ブラジル大会の出場権獲得に向けて大きな期待が集まった。

だが、同監督はタイ戦の惨敗をきっかけにあえなく解任。代表チームは以前よりも弱体化した上に、400万ドル(約4億円)の違約金を支払わなければならず、中国としては散々な結果に終わった。

人気回復に元イングランド代表主将のデービッド・ベッカム氏を起用したが

批判の矛先は代表チームだけでなく国内リーグにも向けられている。中国サッカーのプロ1部スーパーリーグ(CSL)は人気、実力ともに欧州のトップリーグに劣っており、ここでもやはり外国人頼みが目立つ。

最近では、八百長スキャンダルで傷ついたCSLの信頼を回復させるため、元イングランド代表主将のデービッド・ベッカム氏を広報大使に起用したばかりだ。

外国人頼みではなく、自国の選手を育成する動きも出始めた。近年話題となったのは、中国のサッカークラブとして最も成功を収めている広州恒大のサッカースクールの開設だ。

不動産王として知られ、広州恒大のオーナーでもある許家印(シュージャーイン)氏が12年、若い才能を育成するために設立した。その規模は世界最大とされている。

ただ、中国が再びW杯に出場するまでの道のりは依然として遠そうだ。壁となっているのはサッカー人口の少なさ。

「サッカーの成功は、競技人口と密接に関連している」。こう指摘するのは、英国出身で中国最大級のアマチュア・サッカークラブを運営するローワン・シモンズ氏だ。

シモンズ氏は20年以上にわたり中国で草の根のサッカー普及活動に尽力してきた。同氏によると、統計的には20万人に1人の割合で名選手が生まれるはずだという。

サッカー人気は高いが実際にプレーする人の数は多くないという

中国サッカー協会(CFA)の発表では、中国の子どものサッカー人口は現在、7000人から5万人程度とされており、400万人近い人数を誇る英国と比べると、まるで少ない。

同氏の計算では、将来的にはワールドクラスの選手の4人に1人が中国人となっても不思議ではないとのことだが、今のところ巨大な人口をサッカーに生かし切れていないのが現状だ。中国人のサッカー観戦熱は高いが、実際にプレーするとなると躊躇(ちゅうちょ)する場合が多い。

かつて米国でプレーし、アジア各国でサッカー指導を行うトム・バイヤー氏も、足元のサッカー人口を増やすことの重要性を説く。

同氏は今、中国学校サッカー事務局の技術顧問および草の根大使として、中国全土の幼稚園を回る計画を進めている。日本各地で子どもたちにサッカーを指導し、日本サッカーのレベルを押し上げた実績が買われた。

バイヤー氏はアジア全体の問題として、サッカー文化が十分に根付いていないことを指摘する。特に中国では、サッカーを子どもの勉強の息抜き程度にみなす親が多い。

同氏は、外国から選手やコーチを招くのではなく、子どもがサッカーに触れる機会を増やすことこそ強化の近道だと指摘。「単にプロ選手になるためにスポーツをするのではなく、ライフスタイルの一環としてスポーツを教えることを目標にしている」と話す。

子どもへの普及を重視する点では、シモンズ氏も同様だ。

ドイツの優勝で幕を閉じたブラジル大会。近い将来、中国代表の本戦出場もありえるか

同氏は、広州恒大のサッカースクールのようなエリート校ばかりでは不十分であり、欧州的な地域密着型のクラブが草の根レベルで競技人口を増加させていくのが理想だと語る。

シモンズ氏が13年前に地域クラブを発足させた時、クラブでプレーしていたのは外国人の子どもばかりだった。それが現在では、クラブに登録している3000人の子どものうち、60%を中国人が占めるまでになった。

英語教育とサッカーを組み合わせたことが転機となった。

同氏のクラブでは英語でサッカーを教える。教育熱心な親は、サッカーを通して英語を学ばせようとして、子どもをクラブに加入させるようになる。するとさらに、子どもがサッカーの魅力に気づくという好循環だ。親の側でも、一人っ子政策のなか、子どもに協調性を学ばせるという意味で、サッカーを重視するようになった。

バイヤー氏によると、中国サッカー界での目下の話題は、アジアサッカー連盟(AFC)主催のU-16(16歳以下)アジア選手権だ。U-17W杯の出場権を賭けて戦う予定で、「ここから全てがうまくいくだろう」と意気込む。

事はそれほど簡単に運ばないかもしれないが、草の根レベルでのサッカー熱を取り込んでいくことができれば、中国代表が再びW杯の舞台に戻ってくる日もそう遠くはないのかもしれない。

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