自分らしい生き方を 「セーラー服おじさん」のメッセージ

「ネコのポーズ」を決める「セーラー服おじさん」こと小林秀章さん

2014.07.25 Fri posted at 19:49 JST

東京(CNN) 集団と調和、安定を重んじる日本社会で、個人が思いのままに生きることはなかなか難しい。そんななかで勇気ある一歩を踏み出したのが、「セーラー服おじさん」こと小林秀章さん(51)だ。

セーラー服の胸に赤いリボン、ポニーテールの髪、ローファーにハイソックス。典型的な女子高生ファッションだが、薄くなりかけた白髪と口ひげに縁取られた丸顔は、まぎれもない中年男性だ。ひと味違うその姿が、東京の街で人気を呼んでいる。

小林さんは特許の発明者にも名を連ねるコンピューターエンジニア。さらに写真家として活動し、音楽プロデュースの予定もあるなど充実した生活を送っている。

だが昔からこうだったわけではない。

「大学時代は数学専攻の内向的な学生で、人と話をすることもなかった。この服装で歩く方がずっと自分らしい気分だ」と、小林さんは語る。

一緒に写真を撮ってほしいとひっきりなしに声がかかる

「日本では社会に合わせることがすべて。みんな息が詰まっている」――インタビューに応じる小林さんの写真を撮ろうと、周りに人だかりができる。

保守的な日本の中でも個性豊かな街、原宿。近くの代々木公園はコスプレのメッカだ。しかしここでもセーラー服おじさんは目立つ。渋谷の交差点から徒歩15分の道のりも、小林さんは会う人ごとに「一緒に写真を」と声をかけられるので2時間もかかってしまった、と笑う。

秋葉原で小林さんを見かけたという米国人旅行者は「とてもくつろいだ、満ち足りた表情で、人生をありのままに受け止めている感じが印象的だった」と話す。

そんなユニークな生き方に注目したのが、大学受験予備校の早稲田塾だ。小林さんは最近、ここで特別公開授業の講師を務めた。公立学校では依然として「出る杭は打たれる」という風潮が根強いなか、教育現場にセーラー服おじさんを招いたのは大きな一歩といえるだろう。

小林さんの人気者ぶりをCNNが取材

「自分らしさ」こそが豊かな人生を送る鍵だと、小林さんは話す。「何かやりたいことがあるならやりなさい」というのが、小林さんのメッセージだ。

歌舞伎の女形や宝塚歌劇団にみられるように、女装、男装は日本の文化史の中で重要な位置を占めてきた。今もテレビのバラエティー番組やアニメ、漫画にはよく登場する。

だが実際に女装して街を歩く小林さんには、侮辱的な言葉を投げ付ける人もいる。警官にもこれまでに10回は呼び止められた。

それでも小林さんにとっては、写真を撮ろうと押し寄せる人々の明るさや、子どもたちに「わが道を行く解放感」を伝えられる喜びの方が、はるかに大きな意味を持つ。

社会に受け入れてもらうために、型にはまった生き方をする必要はない。自分自身がそれを証明していると、小林さんは胸を張った。

セーラー服おじさんにCNNがインタビュー

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