(CNN) 薄汚れてしわくちゃになった紙幣はもうなくなる――イングランド銀行(英国中央銀行)がそんな見通しを発表している。
イングランド銀行の計画では、現行紙幣に代えて2016年から、合成樹脂のポリマーを素材とする新紙幣を導入することが決まっている。
16年にまずチャーチル元首相の肖像を印刷した5ポンドのポリマー紙幣を導入、続いて17年には小説家ジェーン・オースティンの肖像を描いた10ポンドのポリマー紙幣を発行する予定だ。
切り替えの背景には、ポリマー製の方が耐久性に富み、偽造しにくく、長い目でみると安上がりだという事情がある。同様の理由で、オーストラリアやカナダでは既に、ポリマー紙幣が採用されている。
英国における紙幣流通の歴史は古く、300年以上の伝統がある。そんな中、最新のテクノロジー導入に踏み切った理由として、イングランド銀行の出納部門の責任者であるビクトリア・クリーランド氏は、まず偽造紙幣対策を挙げる。
ポリマー紙幣には、偽造紙幣対策として、特徴的な透かしが入っており、透明な窓のようにして向こう側を完全に見透かすことができる。
防犯性能の次に来る利点としてクリーランド氏が挙げるのは、耐久性だ。ポリマー紙幣は通常の紙幣に比べて2・5倍長持ちするとされており、洗濯機で洗っても印刷がにじむことはない。
この耐久性の良さから、切り替えにかかるコストを考慮に入れても、ポリマー紙幣を導入したほうが最終的には安上がりとなる。ポリマー紙幣の発行後10年で、最低でも1億ポンド(約174億円)の節約となる計算だという。
紙幣だけでなく硬貨についても、新テクノロジー導入の波が迫っている。英王立造幣局は今年3月、新1ポンド硬貨のデザインを公表。最新の偽造対策テクノロジーを埋め込んだ硬貨を新たに導入する計画を発表した。
現状の1ポンド硬貨は30年以上にわたって使用されているが、年々巧妙化する偽造技術に対して脆弱(ぜいじゃく)になってきており、現在の流通量の3%、数にして4500万個の硬貨が偽造されたものだという。
英王立造幣局の流通担当ディレクター、アンドリュー・ミルズ氏は、「現在、硬貨に使われている電磁署名は時間がたつと摩耗してしまい、偽造硬貨の判別が難しくなる」と話す。そこで、17年から導入される予定の新1ポンド硬貨には、代わりに「統合セキュリティー識別システム」(ISIS)と呼ばれるテクノロジーが応用される。
ISISは、紙幣に導入されて既に20年が経過したシステムで、一般の利用者や自動販売機のオペレーター、小売り業者や銀行システム運営者など、硬貨の流通に携わるさまざまな人々を偽造の被害から守ることにつながるのではないかと期待されている。
まもなく現金は消えるだろうとの声も多いが、当分、プラスチックの形で現金が残ることになりそうだ。
16年からポリマー紙幣が登場 英