中国、旧日本軍人の供述書を公開 日本批判強める

中国が日本に対して歴史問題で批判を強めている

2014.07.16 Wed posted at 20:14 JST

北京(CNN) 中国のメディアが日本の歴史問題に対する批判を強めている。同国の文献保管機関はこのほど、第2次世界大戦後に中国で軍事裁判を受けた旧日本軍人の供述書を公開した。

戦犯と認定された日本人45人の供述内容を公開するため、インターネットに専用サイトが設けられた。文書には手書きで、多数の女性を強姦(ごうかん)したことや、中国人を生きたまま埋めたり解剖したりしたことを認める供述が記されている。

サイトの紹介文は冒頭で「安倍政権は発足以来公然と善悪を混同し、侵略と植民地化政策の歴史をごまかそうとしてきた」との批判を展開している。

日本と中国の間には戦争の暗い歴史がある。1937年から約8年間にわたった日中戦争では、日本軍が南京を占領した際に多数の中国人を殺害したとされる事件が起きた。また朝鮮半島や中国の女性たちが慰安婦として働かされた。

だが専門家らによると、戦争の歴史が持ち出される背景にあるのは、近年の日中対立だ。

両国の関係は2012年、日本政府による尖閣諸島の国有化をきっかけに悪化した。

続いて中国が13年11月、同諸島を含む東シナ海に防空識別圏を設定した。日本や東南アジア諸国は、中国の軍事力強化や対外強硬路線に懸念を示している。

戦争時の南京の様子を解説する資料館に人々が足を運ぶ

13年12月には安倍首相が靖国神社を参拝した。それから半年余りたった今月1日、安倍政権は集団的自衛権を行使できるようにする憲法解釈の変更を閣議決定した。

中国はこれに対抗するように、旧日本軍人の供述書を公開。日中戦争のきっかけとなった盧溝橋事件から77年を迎えた7日には、事件の舞台となった場所で大規模な式典を開いた。

米テンプル大学日本校のジェフ・キングストン氏は「中国の動きは、安倍首相が戦争の汚名返上を試みていることに対する反応だ」との見方を示す。

同氏はまた、中国共産党が90年代以降、反日的な愛国心をあおろうとしてきた動きの裏には、89年の天安門事件で損なわれた党の正統性を取り戻そうとする意図があると指摘する。

中国の指導者にとって、反日感情に駆り立てられたナショナリズムは強力な助けになり得る。政治評論家のフランク・チン氏によれば、「習近平(シーチンピン)国家主席は国民を団結させ、自身の地位を固めるためにナショナリズムの高揚を図っている」という。

中国はさらに、国際社会に向けても日本の歴史問題を訴えようとしている。

戦争体験者の話を聞く機会も

「帝国主義時代の歴史は安倍首相のアキレス腱だ」と、キングストン氏は語る。「中国は安倍首相が右寄りだと強調することで、米国と日本の間にくさびを打ち込み、同じ傷跡を共有する韓国を自国側に引き寄せることができる」という。つまり、中国は日本の歴史問題を宣伝することで、日本を同盟国から孤立させようとしているというのだ。

しかし諸外国が冷めた対応を示した場合、中国の宣伝作戦は逆効果に終わる可能性がある。「もっと静かに主張した方が効果的ではないか」というのが、キングストン氏の意見だ。

同氏によれば、こうした作戦は問題の解決をさらに遠ざけてしまう恐れもある。双方とも、面目を保ちつつ引き下がる道を見つけにくくなってしまうからだ。

安倍首相は習主席に繰り返し会談を申し入れ、「こちらは対話の扉を常に開けてある」と呼び掛けてきた。しかし専門家らは、双方が互いの譲歩を待ち続ける限り会談は不可能だと、悲観的な見方を示す。

12月に開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の場で、両首脳の初の会談が実現するかどうかに注目が集まっている。

日本の歴史問題を強調する中国

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