大衆の心にも響く「中国の夢」

「中国の夢」がさまざまな場所で語られている

2014.07.05 Sat posted at 17:30 JST

香港(CNNMoney) 北京にいると、あらゆる場所で「中国の夢」というフレーズに出会う。政府の宣伝ポスター、国営メディア、官僚の会見など、至る所でこの言葉が引き合いに出されているからだ。だが、実際のところ、「中国の夢」とは何を指しているのだろうか。

官製スローガンとしての「中国の夢」から、市井の中国人のささやかな夢に至るまで、その実態に迫った。

習近平(シーチンピン)国家主席が「中国の夢」について初めて口にしたのは、およそ2年前のこと。「中華民族の偉大な復興」が中国の夢だと述べたのだった。

以来、中国国営メディアは、習主席の言葉に補足する形で、集団的な観点から「中国の夢」について解説してきた。社会と軍部を増強し中国版社会主義を強化することこそ中国の夢だ、としてきたのである。

ただ、「中国の夢」は単なる官製スローガンにとどまらなかった。このメッセージは大衆の心にも響いたのである。ブランド調査会社ミルワード・ブラウンの調査によると、約70%の中国人が夢の実現は重要だと述べている。

国家としての成功も、中国の人々にとっては重要なのだという

コンサルティング会社チャイナ・マーケット・リサーチグループのアナリストであるベン・キャベンダー氏は、「中国の夢」について、純粋に個人的な達成ではなく国家の栄光に比重が置かれている点に着目する。

同氏によると、中国人は個人だけでなく国家による業績にも誇りを持つ傾向にあり、「中国がよりグローバルになり、認知度も上がり、国際的な議論により深く関与していくことが重要」なのだという。

ただ、個人的なレベルでは、「中国の夢」は他国の人々が抱く夢とそう変わらない。

ミルワード・ブラウンの調べによると、個人の夢や目標として上位に入るのは、健康、良い家庭、仕事での成功といったあたりだ。また、65%の中国人は、幸福の追求が重要だとしている。

市民レベルの「夢」については他の国と大きな違いはないという

近年、お金の使い道として上位に入るようになったのは投資や海外旅行だ。このように優先順位が変化してきたのは、より多くの人々が中産階級に属するようになったためだ。

先のキャベンダー氏の解説によれば、現在の中国人は「快適な家に住みたい、多くの新しい経験を積みたい、家族に無事でいてほしい、周囲が心配なので環境が改善してほしい、安心して暮らしたい」と、ごく身近な夢を抱くようになっているのだという。

もちろん、「中国の夢」を実現するには越えなければならない障壁がまだある。ミルワード・ブラウンの調査によると、最大の心配事は健康や安全面だという。特に懸念されているのは、大気汚染や水質汚染、食の安全、不十分な医療保険制度、それに教育システムをめぐる問題だ。

この他に調査で明らかになったのは、家計の安定や退職をめぐる不安だ。中国の貯蓄率が高止まりしているのも、こうした不安に原因があるようだ。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。