母国を捨てる富裕層、その理由は

「母国を捨てる」理由の一つは資産の確保だ

2014.08.03 Sun posted at 18:14 JST

香港(CNNMoney) 資産を守るために「母国を捨てる」上流階級の人々が増えている。移住先として人気なのはキプロスやスペイン、オーストラリアなどの投資とひきかえに市民権や永住権を取得できる制度がある国々だ。

このような投資家向け移民プログラムは、米国、欧州、カリブ諸国など世界20カ国で利用できる。金融危機の打撃からいまだ立ち直っていない国では景気刺激策が必要とされていることもあり、さらに多くの国が同様のプログラム導入に踏み切る見通しだ。

この問題を巡り、投資移民プログラムについて助言しているアートンキャピタルとシンガポールの調査会社ウェルスXは共同調査を実施、このほど報告書にまとめた。報告書によると、近年、「富裕層向けに投資移民プログラムを提供する国が増えてきている」「いくつかのプログラムは、純粋な投資の手段として超富裕層には魅力的だ」という。

増加の背景には、富裕層にとってプログラムが割安となっている事情がある。投資額として求められる金額は50万ドル(約5000万円)から数百万ドル程度。

ウェルスXの最高経営責任者(CEO)であるミコラス・ランバス氏によると、これは「そうした富裕層の純資産のごく一部」にすぎない。

カリブ海のセントクリストファー・ネビス。カリブ海諸国は移住先として人気だという

具体例を挙げると、ブルガリアでは、投資移民に対して70万ドル(約7000万円)相当の国債を5年間保有することを課している。またカリブ海に位置するセントクリストファー・ネビスでは、40万ドル(約4000万円)を同国の不動産または砂糖産業に投資することを義務づけている。

10年前、こうしたプログラムはわずかしかなかった。だが、多数の国がプログラムを導入し始めた近年では、年間約2万人の富裕層が申請に殺到している。目的は財産保全だ。

より低い所得税を求めたり、あるいは、相続税の支払いから逃れることが狙いとなっている場合もある。この結果、超富裕層の子どもは、今後30年にわたり16兆ドル(約1600兆円)以上もの額を相続することになる見込みだ。

極端なことを言うと、抜け目ない移住者であれば、複数の市民権や居住許可証を手に世界各国を飛び回ることもできるだろう。こうして数日ごとに国を移動していけば、永久に居住者として課税されずに済むかもしれない。

アートンキャピタルの社長であるアルマンド・アートン氏によれば、課税逃れ以外の移住目的として挙げられるのは、質の高い教育、政情不安の回避、ビザの必要ない外国旅行、高い生活水準などだ。

投資移民の出身地として最も多いのは中東で、インドと中国がこれに続いている。アートン氏によれば、最近では、政治情勢の不安定さを懸念したロシア人富裕層からの問い合わせが多いという。

移住先として最も人気があるのは欧州であり、次にくるのが節税に有利なカリブ諸国だ。アートン氏によれば、中東の投資家に好評なのはこの2地域だが、中国人はアメリカンドリームを目指して米国を目指す例が多い。二重国籍の取得を禁じられている中国人にとって、グリーンカード(米国永住権)を入手できるという意味でも米国のプログラムは魅力的だ。

実際、CNNが米国政府のデータを分析したところ、米国の投資移民プログラムでは中国人が80%を占めていた。

ランバス氏は「グローバル志向の富裕層には投資移民が必須になりつつある」と指摘した。

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