サンパウロ(CNN) サッカーのワールドカップ(W杯)ブラジル大会の開幕を目前に控えたサンパウロで、住民らが低所得者向け住宅の整備などを求め、大規模なテント村を拠点に抗議運動を展開している。
「民衆カップ」と呼ばれるこのテント村は数週間前、W杯に向けて同市東部に新設されたスタジアムから4キロ足らずの空き地に突然出現し、瞬く間に3000世帯以上の規模まで膨れ上がった。
ある日の午前、防水シートとベニヤ板でできた共同炊事場で食事の用意をしていた女性に話を聞いた。女性によると、この地区の家賃はスタジアムの建設が始まってから2倍近くに高騰したという。
「700レアル(約3万2000円)の家賃に食費と衣料費を加えると高額になる。私たちには払えない」と、女性は話す。家族は夫と娘4人。政府の助成でこの土地に住宅が建つことを願い、一家全員でテント暮らしを送っている。家族が交代でテントに泊まりに来る世帯もある。
同市の最低賃金は1カ月で約3万7000円だ。年に数十パーセントずつ上がる家賃のペースには到底追いつかない。スタジアム周辺の地区では現在、寝室2部屋の簡素なアパートでも家賃が3万円を超える。
ただし、家賃の高騰はこの地区だけでなく市全体にみられ、必ずしもW杯の影響とは言い切れないようだ。
昼間は人影のまばらなテント村に、夜になると仕事帰りの家族や集会参加者が流れ込んでくる。W杯の試合を見るつもりはないという声も多い。
毎晩開かれる集会では、テント村の運動を率いる女性指導者が登壇し、群衆から歓声が沸き起こる。「W杯と新スタジアムが残す遺産は、高騰した家賃と住民を郊外へ追いやる流れだけ」と、指導者は訴える。
市内で繰り返される大規模なデモを受けて、政府は今週、低所得者向け住宅の建設計画を月末までに発表すると約束した。テント村の家族らは、約束が守られなければただちにデモに出動する態勢で、政府の動きを見守っている。
「サッカーより住宅を」