（ＣＮＮ） 世界的な実業家やスポーツ選手は子どものころ、どう育てられたのか――。ＣＮＮのニュースアンカー、ロンドンのニーナ・ドスサントス特派員が、成功者の母親たちにインタビューした。
イブ・ブランソンさん（９０）は西ロンドンのアパートのソファの上で、息子との思い出を振り返った。英バージングループの創業者、リチャード・ブランソン氏だ。
「幼いころのあの子はまるで火の玉のようだった」とイブさん。「そういう子にはサラブレッドと同様、手綱を軽く引くことが大事。強く締めすぎて冒険や情熱を台無しにしてはいけない」と話す。
いちずな性格は３～４歳のころから表れていた。強く叱られた時は地元の農家へ逃げ込んだという。やがて自宅にだれかがやって来て、ベルを鳴らす。「青い目の男の子を預かっていますがお宅のお子さんですか」と尋ねられ、どれだけほっとしたことか。
未来の成功者を育てるのに「愛のむち」は効果的か、あるいは親からの支えや励ましがカギなのか。その答えを探ろうと、母親たちへのインタビューを続ける。
インターネットの生みの親と呼ばれるティム・バーナーズ・リー氏の母、メアリーさん
幼いころから自分の考えがしっかりしていたのは、南アフリカ出身の起業家、イーロン・マスク氏も同じだった。母親のメイさんは幼かった同氏を自宅に置いて、ほかの子どもたちと車で２０分、徒歩で４時間ほど離れた親族の家を訪問したことがある。
ちょうど帰途に就こうとした時、歩道の上を幼児がおぼつかない足取りでやって来るのが見えた。「イーロンが家から歩いてたどり着いたのです」と、メイさんは振り返る。
ジュディ・マリーさんはジェイミー、アンディという２人の有名テニス選手の母親で、自身も選手やコーチの経験を持つ。アンディ選手が昨年、ウィンブルドン選手権で優勝した時は、心配で見ていられなかったという。
息子たちが暇を持て余さないようにと始めさせたテニスだったが、２人とも８～９歳のころまでには「飛び抜けて良い選手」に成長していた。それでも、息子が優勝トロフィーを掲げる姿を見たジョディさんは、「ただ信じられない気持ちでいっぱいだった」という。
ジュディ・マリーの息子２人はダブルスとシングルスでそれぞれウィンブルドンで優勝
ジョディさんは強引な母親とも伝えられてきた。しかし兄弟は、「母が私たちに何かを押し付けたことは一度もない」と話したとジョディさんは語る。
ウェブの開発者でインターネットの生みの親と呼ばれる英国のティム・バーナーズ・リー氏は、両親がともにコンピューター・プログラマー。就寝前には絵本を読む代わりに微分積分の問題を解く家庭に育った。
母のメアリーさん（９０）は、かつて家族が食卓を囲み、数学の問題に取り組んだ日々を思い出す。両親が降参すると、そこからが息子の出番だ。メアリーさんは当時のことを話しながら、「本当に楽しかった」と目を細めた。