「図書館」の消滅は杞憂?、デジタル時代でも利用増 米

2014.06.02 Mon posted at 17:30 JST

(CNN) 情報のデジタル化が進む中、図書館の存在意義が薄れているとの認識が米国内で広がっている。だが実際には、図書館の利用は過去10年間で増えているようだ。

書誌情報などをオンラインで提供する非営利団体OCLCのキャシー・デローザ氏は、「依然として多くの人が公共図書館を利用している」「それを聞くと人々は驚く」と語る。

たしかに予算は削減が続き、インターネットの普及によりサービスの見直しを迫られてはいるが、それでも図書館は地域に欠かせない公共施設だ。実際、米国では過去10年間に公共図書館の利用は増えている。また米博物館・図書館サービス機構(IMLS)によると、コンピューターの使用などのサービスは過去10年で利用数が倍増し、さらに2010年には図書の貸出数が24億6000万冊に達し、過去最高を記録したという。

常連が多いだけでなく、旅行者に人気の図書館もある。例えばシアトル市公共図書館の年間利用者数は700万人を超える。同図書館の広報担当アンドラ・アディソン氏は「特に中央図書館は、シアトルで最も美しい現代建築の1つ」と語る。

米世論調査機関ピュー・リサーチ・センターの調査結果によると、米国人は自分たちが住む地域の公共図書館の役割を高く評価しており、2013年の調査では回答者の94%が公共図書館はその地域の生活の質を向上させると回答した。

写真家のロバート・ドーソン氏は、過去18年間、図書館の写真を撮り、図書館の職員や利用者にインタビューを行ってきた。ドーソン氏が図書館に魅力を感じるのは、図書館が各地域のエコシステムにおいて重要な役割を果たしているからだという。

ドーソン氏は「私は図書館員ではないが、18年もこの仕事を続けているとさまざまなことが分かってくる」とし、「面白いことに、図書館を見ればその地域の住民がどういう人々で、何を共有しているかが分かる」と付け加えた。

また米国図書館協会のバーバラ・ストリップリング氏は、図書館はあらゆる役割を果たす自在性も備えると語る。今や図書館は単に情報を提供するだけでなく、人々の交流のための資源や機会を提供する場所でもある。

ドイツのハンブルク州・大学図書館の司書で、利用者サービス担当責任者兼企画・建設担当顧問を務めるオラフ・アイゲンブロート氏は、図書館が今日も人気を維持し続ける主な理由として、情報が集積していること、地域住民が集まれる場所であること、共同学習の機会を提供していることの3点が挙げられるという。

また図書館は「快適さ」や「癒やし」を感じられる場所でもある。「図書館は、居心地がよく、リラックスでき、さまざまな情報を提供してくれる場所になりつつある。博物館のような公共スペースとは異なり、図書館にはある種のプライベートな空間の性質を持ち、地域全体のリビングのような役割を果たしている」とアイゲンブロート氏は語る。

では、われわれの図書館に対する親しみや愛情はどこから来るのか。

写真家のドーソン氏は、幼少期に両親と図書館を訪れた時の楽しい思い出が図書館への愛着につながっていると指摘する。OCLCのデローザ氏も、図書館における個人的かつ有意義な体験が図書館への親近感を生んでいると語る。

またシアトル市公共図書館のアディソン氏は、無料で誰でも利用できる点こそが公共図書館の最大の魅力と語る。

「これらすべてサービスを無料で利用できる場所は公共図書館以外にない。三つぞろいのスーツを着ている人も、無精ひげを生やしている人も、図書館に行けば歓迎してもらえる」(アディソン氏)

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