航空会社がクラウドファンディングで資金調達、その狙いは?

2014.05.17 Sat posted at 09:00 JST

(CNN) オデッセイ・エアラインズは、ロンドン・シティ空港から米ニューヨーク直行便の特別仕様機運航に向け、クラウドファンディングを通じて約500万ポンド(約8億6000万円)の資金調達を目指している。

たとえば、ロンドンで仕事を終えてニューヨークに直行便で向かう場合、ロンドン中心部から程遠いヒースロー空港やスタンステッド空港ではなく、路面電車でロンドン・シティ空港に向かって素早く安全検査を受け、税関を通過してゲートまでのわずかな距離を歩き、全席ビジネスクラスのニューヨーク直行便に乗り込むことが可能になる。

このアクセスの良さが、2016年にサービス開始を目指すオデッセイの売りだ。

「我々がターゲットにしているのは、従来のビジネス旅行者だ」と語るのは、オデッセイの最高経営責任者(CEO)アダム・スコット氏だ。同氏はさらに「現在、入手可能な飛行機の中で、最も燃費効率の良い、最新の飛行機を運行する」と付け加えた。

またスコット氏は、ロンドン中心部から近く、ゲートまで歩く距離も短いロンドン・シティ空港を拠点とすることにより「乗客の旅行時間を大幅に短縮できる」としている。

オデッセイは、カナダのボンバルディアの航空部門「ボンバルディア・エアロスペース」が開発するジェット旅客機「ボンバルディアCシリーズ」の定員40人の特別仕様機10機でサービスを開始し、ロンドン・シティ空港からニューヨークなどに向かう直行便を運行する計画だ。

そのために同社は、インターネットなどを通じて不特定多数の人から資金を集めるクラウドファンディングにより約500万ポンド(約8億6000万円)の資金調達を目指しており、現在その一環として英クラウドキューブで100万ポンド(約1億7200万円)の資金を募っている。すでに投資家から、あるいはソーシャルレンディングにより約500万ポンドの資金を調達済みだが、運航を開始するには、主に機関投資家から、総額6000万ポンド(約103億円)以上の資金を集める必要がある。

これまで芸術家や個人起業家、さらに米テレビドラマ「ヴェロニカ・マーズ」の製作者らがクラウドファンディングで資金を獲得したが、航空会社であるオデッセイがクラウドファンディングで資金調達を行う狙いは何か。

オデッセイは、クラウドキューブでの資金調達を通じて、第1便が飛び立つ前に顧客を集め、ブランド・ロイヤルティー(顧客のブランドに対する忠実度)を確立したい考えだ。

スコット氏は「社名を世に出すことにより、会社の認知度を高めるのが狙い」とし、「これは(初期投資家にもなりうる)顧客予備軍と早期から触れ合うための手段だ」と語った。

これまでもEOS、マックスジェット、シルバージェットといった航空会社が全席ビジネスクラスの旅客機を運行していたが、同3社は世界的経済危機が襲った2007年から08年にかけて顧客集めに失敗し、経営に行き詰まった。しかし、シルバージェットの一部幹部が「再挑戦」のためにオデッセイに入社している。

ただ、これら3社のビジネスモデルはオデッセイのそれと異なり、より旧型で燃費の悪い飛行機を使用していた上に、ロンドン・シティ空港に比べロンドン中心部から遠い空港を拠点としていた、とスコット氏は指摘する。

一方、オデッセイは都心に近いシティ空港が拠点空港であることに加え、運航する飛行機も最新型だ。オデッセイによると、同社が使用するボンバルディアCシリーズは競合機に比べて燃料消費が20%少なく、運航費も15%安いという。

オデッセイのシティ空港での最大のライバルは、ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)だが、同社が運航する全席ビジネスクラスのA318は、燃料が満タンの状態でシティ空港の長さ約1.2キロの短い滑走路から離陸できない。そのため、ニューヨークに向かう前にアイルランドに立ち寄り、燃料を満タンにする必要がある。

その点、ボンバルディアは燃料が満タンの状態でもシティ空港から離陸し、ニューヨークに直行できる。

オデッセイは航空券の目標価格を発表していないが、スコット氏はいくつかのヒントを出している。

「我々は格安航空会社になるつもりはないが、ライバル企業よりもはるかに高い価格を設定するつもりもない。市場で競争力のある価格を提示するつもりだ」(スコット氏)

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