南シナ海緊張、中越が掘削で対立 比は中国漁船拿捕

2014.05.08 Thu posted at 19:37 JST

香港(CNN) ベトナムの国家国境委員会幹部は8日までに、同国と中国が領有権を争う南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島近くで中国の国営企業が石油の掘削作業を開始し、周辺海域に軍用船を含む60隻の船舶を集結させてベトナムの巡視船らに故意に衝突するなどの威嚇行動に出ていると発表した。

一方、南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島近くでは6日、絶滅危惧種のウミガメを大量に捕獲していたとして、フィリピン当局が11人乗りの中国漁船を拿捕(だほ)した。比当局は主権保持のための行動としている。

国営企業の中国海洋石油(CNOOC)は今月2日、パラセル諸島近くで海上掘削施設による作業を開始。中国当局はこれより前、同施設周辺に約4.8キロにわたる排他的海域の設定を宣言し、軍用船による監視活動を始めていた。

ベトナムの国家国境委員会副委員長によると、中国船舶による威嚇行動は4日以降に始まり、放水砲なども用いた。ベトナム側に人的な被害が出たとしている。

中国外務省報道官は掘削作業は中国領内の合法的な行動と主張。ベトナム側の嫌がらせ行為は中国の主権侵害であるとも述べた。船舶同士の衝突については確認しなかった。

CNOOCは、スプラトリー諸島の海底には中国の原油やガス資源の3分の1が埋蔵されていると主張している。南シナ海の領有権論争には中国、ベトナム、フィリピンの他、台湾、マレーシアやブルネイも絡んでいる。中国は同海全域での主権を求めている。

米国務省のサキ報道官は、パラセル諸島近くでの中国による掘削作業を非難。「一方的な行為は争いのある主権論争で自らの主張を強める中国の行動様式の一環とみられる。この種の行為は地域の平和と安定を損ねる」と批判した。

これに対し中国外務省の報道官は、掘削作業はベトナムとは無関係な行動であり、米国も同様であると反論した。

比警察によると、同国当局による中国漁船の拿捕(だほ)はスプラトリー諸島にあるハーフムーン礁近くで発生した。ウミガメ350匹を捕獲していたという。中国当局は漁船拿捕を受け、比側にさらなる挑発行為の中止を求めた。

南シナ海問題などに詳しい米マサチューセッツ州工科大学の学者は、今回のパラセル諸島近くでの衝突を受け、全面戦争ではないが軍事衝突が起きる可能性があると指摘。中国とベトナム間の問題は中比間の問題より深刻との見方を示した。

中国は1950年代以降、パラセル諸島の北半分を実効支配下に置き、南半分については74年以降、実質的に管理している。

また、フィリピンが今回、中国漁船の拿捕に踏み切った背景要因として、オバマ米大統領が最近訪比して結んだ新たな軍事協力協定に鼓舞された側面があると分析した。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。