中国で進む「改革」 その現状は

中国で「改革」が進んでいるが・・・

2014.05.25 Sun posted at 17:54 JST

(CNN) もし米国で、反汚職運動を展開するオバマ大統領によって、チェイニー前副大統領が逮捕され、財産を没収されるようなことがあれば、大騒動になるだろう。現在の中国で起こっていることを大まかに例えれば、こういうことかも知れない。

CNNでは2014年の年初、「今年は中国の年になるだろう」とし、さまざまな変化を予想した。だが、ここまで多方面で変化が起きるとは、さすがに想定していなかった。

中国では現在、新世代の指導層が台頭している。その筆頭に立って改革を先導しているのが、権力集中を進める習近平(シーチンピン)国家主席だ。故トウ小平(トンシアオピン)氏以来、最も人気があり野心的な指導者といえる。習主席が就任わずか1年でやってきたことを見ていこう。

まず特筆すべきなのは、習政権が強力に推進する汚職撲滅運動だ。元公安トップの周永康(チョウヨンカン)氏を巡る大規模捜査がとりわけ際だっている。周氏は中国石油天然ガス集団(CNPC)の元トップであり、権力の中枢である中央政治局常務委員を務めていた、いわば中国版チェイニー氏だ。

改革を推し進めている習近平国家主席

当局はその周氏の家族や側近を相次いで拘束、150億ドル(約1兆5000億円)相当の資産を差し押さえた。

汚職摘発は軍部にも及んでいる。報道によれば、軍事検察院は3月、軍総後勤部の副部長だった谷俊山中将を起訴したという。職権乱用により不正に蓄財し、自宅の豪邸を建設するなどした疑惑だ。

第2にあげるべき変化は、環境対策だ。昨年7月に公表された研究によると、中国北部では大気汚染により平均寿命が5.5年短くなっているという。

こうした事態を受け、当局も対策に本腰を入れ始めた。まず、大気汚染削減に向け2800億ドル(約28兆円)を投入することを約束。今年に入ってからは、1万5000カ所の工場を直接検査し、汚染物質の排出状況を公表している。

水質汚染にも抗議の声が上がっているが、この水問題についても、今年2月、3300億ドル(約33兆円)を投じる計画が発表された。

このように当局が大規模な環境対策に乗り出している背景には、国民の不満のほかにも、経済成長が減速することへの懸念がある。

環境問題にも取り組む姿勢を示している

世界銀行によると、環境汚染が経済に与える損害は、国内総生産(GDP)の9%に及ぶとされている。

最後に、習政権の施策として最も重要なのが、経済改革だ。中国共産党は昨年11月、政府が引き続き経済を管理していく方針を示す一方、市場が「決定的な」役割を果たすことも認めた。資源配分にあたって政府の介入を減らし、国営企業への民間セクターの投資を増大させる姿勢を打ち出したのである。

驚くべきなのは、李克強(リーコーチアン)首相が3月の全国人民代表大会(全人代)で表明した改革優先路線だ。

この中で李首相は、今年の目標成長率を7.5%に据え置くとともに、経済成長が改革の流れを止めることはないと明言したのである。これまでは、雇用拡大のため経済成長が優先され、改革は後回しにされるのが常だった。

もっとも、明確にしておかなければならないが、今のところ、経済改革といってもあくまで口約束にすぎず、実行に移されたものはほとんどない。さらに、次々に改革案が提示される中でも、依然として欠けている点がある。政治改革だ。

民主政治や多元主義に向かう動きはまだ少ない。中国共産党の力を弱めるのではなく、むしろ党の正統性を強化することが改革の狙いとなってしまっているためだ。

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