エベレスト雪崩、登山家を救ったシェルパ

2014.04.24 Thu posted at 15:05 JST

ネパール・カトマンズ(CNN) エベレスト登頂に挑んでいた登山隊が雪崩に襲われ、ガイド役のシェルパ13人が命を落とした事故。あやうく遭難を免れた米国人登山家のジョン・ライターさんが23日、CNNのインタビューに答え、シェルパに命を救われた経緯を語った。

「山で死ぬ人たちはこれまでにも見てきた」というライターさんだが、今回の事故では運ばれて行く遺体のあまりの多さにショックを受けたと振り返る。

雪崩は18日に発生し、シェルパ13人が犠牲になったほか、まだ見つかっていない3人も絶望と見られて捜索は打ち切られ、21日に16人の慰霊式が営まれた。

ライターさんを助けてくれたのは、24年の経験を持つベテランのシェルパ、ダワさんだった。

雪崩はベースキャンプの上部で氷河の一部が崩れて発生。ライターさんによると、ダワさんの「かがめ、かがめ」という叫び声に続いて氷が落下してきた。

「見上げると(氷河が)割れるのが見え、崩落する音が聞こえた」。直後に峡谷は氷塊に包まれ、登山路は見えなくなった。

エベレストで発生した雪崩で13人の死者が出ている

しかしライターさんは、ダワさんが氷の壁の陰に押し込んでくれたおかげで雪崩に巻き込まれずに済んだという。

この雪崩で約50人の登山隊のうち、ほぼ3分の1の行方が分からなくなった。ダワさんはまずライターさんの身を気遣い、それから仲間の捜索を開始した。その日1日中、雪に埋まったシェルパたちを掘り起し、ケーブルに乗せてヘリコプターで下山させる作業を続けたという。

長い1日を終えて就寝する前にはライターさんのテントにやって来て、無事を確認して行った。

ベースキャンプに残る登山隊は23日も亡くなったシェルパたちををしのび、「父親が帰ってこない子どもたちのことを思った」とライターさんは話す。

シェルパの多くは仲間の葬儀や埋葬に出席するために下山し、ほとんどは戻って来なかった。しかしダワさんは戻って来て、一緒に登山を続けることができなくなったと告げたという。

シェルパをしているのはヒマラヤの高地に住む先住民で、命を危険にさらしながら一家の生活を支えている。遺体で見つかった1人、26歳のシェルパも、3人の兄弟と母親を養っていた。

今回の事故で、今年予定されていた主なエベレスト登山計画は相次いで中止になった。今年は入山が禁止されるかもしれないとライターさんは予想する。

外国人登山者が1回のエベレスト登山で費やす額は4万~9万ドル(約400万~900万円)。一方、シェルパの1シーズンの稼ぎは6000ドル(約60万円)ほどで、頂上に到達できればボーナスが出る。

しかしシェルパたちは今、たとえ登山が中止されたとしても、全額を支払うよう求めている。自分たちが冒すリスクに見合った金額を受け取り、今回のようなことが自分たちの身に起きた場合に補償される額を引き上げて欲しいとの考えだ。

登山者たちも、シェルパの要求がかなうことを望んでいるという。

今ベースキャンプにいる登山隊は、今年エベレストの山頂には到達できないだろうとライターさんは言う。生き抜こうとする強い意志が失われてしまったとつぶやいた。

助かった登山家が語るエベレスト雪崩

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