インドで「世界最大の選挙」 知っておくべき11のこと

インドで「世界最大の選挙」が始まった。押さえておくべきポイントは?

2014.04.20 Sun posted at 17:42 JST

(CNN) インド総選挙の投票が7日に始まった。有権者は下院議院543人を選び、次いで下院が次期首相を選出する。この世界最大の民主選挙で注目すべき11点をまとめた。

1.大規模な選挙

まず選挙の規模が巨大だ。有権者数は8億1400万人にもおよぶため、投票には時間がかかる。9期間に分け、5週間をかけて投票が行われる予定だ。開票作業は5月16日に行われ、同日中に集計が終了する見通し。

2.最大の争点は経済

選挙で最大の争点となるのは、停滞する経済だ。2000年代には中国並みの8~10%の成長を続けていたインド経済だが、2012年ごろに減速した。現在もGDP(国内総生産)成長率は5%以下にとどまる。慢性的なインフレも懸念材料だ。

成長の再加速と貧困の緩和のどちらを優先すべきか、政治家や学者の間でも議論が分かれている。

3.インド人民党と「モディ旋風」

本命は、最大野党でありヒンドゥー至上主義が色濃いインド人民党(BJP)。下院で最多議席を獲得し、歴史的大勝を収める勢いだ。ただ、圧倒的過半数を確保して連立を組まずに政権を樹立できるかどうかは不透明。

インドの主食のタマネギ。食料価格の高騰や経済成長などが争点の中心となりそうだ

躍進の立役者は、BJPの首相候補であるナレンドラ・モディ氏。経済界寄りで、経済成長路線を鮮明にすることで支持を拡大してきた。 

4.モディ氏のカリスマと論争

モディ氏は西部グジャラート州の州首相として実績をあげてきた。「剛腕」との評価が高く、シン首相とは対照的だ。モディ氏への期待は大きいが、その強権的な姿勢や右翼ヒンドゥー主義の組織とのつながりを批判する声もある。

2002年にグジャラート州で起きた暴動では、イスラム教徒をはじめとする1000人が殺害された。インド最高裁の調査では不問にされたものの、依然としてモディ氏の関与が疑われている。

この事件についてモディ氏の疑惑を問題視した米国務省は05年、同氏へのビザ発給を拒否した。しかし今年3月になり方針転換、選挙に勝利した場合には米国に歓迎するとしている。

5.国民会議派への信頼は失墜

成長の鈍化や慢性的なインフレ、相次ぐ汚職スキャンダルにより、与党の国民会議派は信頼を失いつつある。国民会議派はインドで最も歴史のある政党であり、連立政権の核として過去10年にわたり政権を担ってきた。

国民会議派の首相候補はネール・ガンジー家の御曹司であるラフル・ガンジー氏だが、首相職に対しては乗り気でないとの見方も出ている。

全人口の65%が35歳以下にあたるとされ若年層の票の行方も気になるところ

国民会議派はBJPの政策を排他的として批判しており、社会福祉を重視し貧困削減を訴える。

6.根強い縁故主義

ガンジー氏とモディ氏の争いは、インド政界で主流の世襲エリートへの信任を問うものでもある。

父も祖父も首相であったガンジー氏には、「温室育ち」「浮世離れしている」との批判が付いてまわる。一方、モディ氏はみずからの庶民的な出自を強調、父親のチャイ(紅茶)屋台を手伝っていた少年時代のエピソードを引き合いに出した。

ただ、モディ氏がいくら支持を集めようと、インド政界で依然として縁故主義が根強いことには変わりがない。現議員の30%近く、40歳以下の議員の3分の2は、政治家一族の出身だ。

7.絶えない政治家の犯罪行為

驚くべきことに、現議員の30%が刑事訴追を受けている。今回の候補者についても、5人に1人が刑事訴追を受けているとの調査があり、新議会でも大きな改善は見込めないかもしれない。

インド政界で汚職や犯罪行為が絶えないのは、選挙費用が高騰しているためだ。今回の選挙費用総額は約50億ドル(約5000億円)に上ると推定されており、12年米大統領選挙の70億ドルに次いで史上2番目に高額な選挙となる。

8.若い有権者とソーシャルメディアの役割

初めて投票する若者は有権者の約10%。インドの人口構成は非常に若く、最新の国勢調査によると、全人口の65%が35歳以下にあたる。この巨大な若年層が支持するのが、経済成長路線だ。

女性への暴力が社会問題化するなか、身の回りの安全を求める声も多い

若年層を取り込むため、選挙戦ではソーシャルメディアの活用も広まっている。

9.庶民党の躍進

反汚職を掲げて躍進しているのが、庶民党(AAP)。近年の反汚職抗議運動の流れから派生した新興政党だ。去年の地方選挙で予想外の快進撃をみせ、党首のアルビンド・ケジリワル氏はデリー首都圏知事となった(ただし、国民会議派とBJPの反対により公約を実現できないとして在職49日で辞職)。

AAPは主流政党から票を奪う勢いで、連立構想の鍵を握るかもしれない。

10.声をあげる女性たち

長らく家族の男性の意向に沿う形で投票してきた女性たちだが、近年は独自の声を持つ勢力となりつつある。

女性が有権者に占める割合は48.5%。家計管理を担う女性にとっての関心事は、やはりインフレだ。12年のニューデリー集団レイプ事件など、相次ぐ女性への暴力が社会問題化するなか、身の回りの安全を求める声も多い。

11.鍵となる地域政党の役割

1989年以来、インドで圧倒的過半数を獲得した政党はなく、今回も同様になりそうだ。そこで、連立政権の形成にあたっては、各地に割拠するさまざまな地域政党が重要になってくる。どのように連立を組むかで、インド政治の将来が左右されるだろう。

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