(CNN) ドイツ人翻訳者のフロリアン・ザイデル氏が日本に住むようになって7年以上。同氏がこの5年ほど夢中になっているのが、日本各地に点在する廃虚巡りだ。
日本における廃虚巡りの人気は、ザイデル氏が始めた5年ほど前と比べて高まってきているという。廃虚巡りを趣味としている人がどのくらいいるかは分からない。だが、ザイデル氏が始めたころには10ほどしかなかった日本の廃虚巡り専門のブログが、今では100くらいまで増えているという。
「日本には廃虚がたくさんある。あとは自分で見つけられるかどうかだ」とザイデル氏は言う。
ザイデル氏に言わせれば、使われなくなって荒れ果てた建物や施設を探す作業こそ、廃虚巡りの最も楽しい部分。ブログで紹介している廃虚の90%以上は同氏自身が調べて見つけたものだ。
多くの廃虚ファンと同様、ザイデル氏もブログでは廃虚の正確な場所を伏せている。心無い人たちに荒らされるのを恐れてのことだ。
使われなくなって久しい建物などを見つけ出し、独特の風景や雰囲気を楽しむのは世界共通。その一方で日本ならではの面白い廃虚もある。「秘宝館」などと呼ばれるセックスをテーマにした博物館の廃虚はそのいい例だ。
「1960年代、欧州ではセックス革命が起きたが、日本では起きなかった。(その代わり)セックスをテーマにした博物館が、特に温泉街に作られた」とザイデル氏は言う。
「かつては日本中に20~30のセックスに関する博物館があったが、大半は90年代以降に閉鎖された。インターネットに駆逐されたのではないかと思う」とザイデル氏は言う。
北海道にある博物館の廃虚でザイデル氏の印象に残っているのは、マネキンを的にした奇怪な射的と、交尾のポーズを取っている動物のはく製だ。「教育的な部分もないとは言えないけれど、すごく変わっている」と同氏は言う。
近年人気を集めているのが1961年に開業し、2006年に閉園した遊園地「奈良ドリームランド」の廃虚だ。
古びたジェットコースターのレールが荒れ果てた園内にそびえる風景は、廃虚の雰囲気が好きな人にはたまらなく魅力的。ただし侵入を試みる人が後を立たず、今では入り口に警備員が配置されている。
ところで廃墟巡りで危険はないのだろうか。
「私は慎重だからけがをしたことはないが、間違いなく危険はある」とザイデル氏は言う。廃虚の中は「さびたものだらけで(刺さってけがをすれば)破傷風になりかねない。鉄条網もあれば、軍関係のエリアには武器が残っている可能性もある。地雷が爆発するかも知れない」