ブラジル・フォルタレーザ(CNN) 南米ブラジル北東部の都市フォルタレーザ。改修されたばかりのスタジアムでは、6月に開幕するサッカーのワールドカップ(W杯)ブラジル大会の6試合が行われる。
だがスタジアムの近くを通ると、際どい服をまとった女性たちが立っている。そう、フォルタレーザはセックス観光の町としても有名なのだ。
ブラジルでは18歳以上であれば売春は合法だ。だがその一方で政府やサッカー関係者は、W杯開幕までに未成年者の売春を減らそうとしており、政府は対策費として800万レアル(約3億6000万円)を計上している。
ソーシャルワーカーのアントニオ・カルロス・ダシルバ氏によれば、スタジアム周辺の売春婦たちはW杯期間中、サッカーファンを相手に大金が稼げると考えていると指摘。「ブラジルがW杯開催地に選ばれて以降、そういう期待が高まった」と言う。
非営利団体「児童労働防止のための全国フォーラム」の2012年の推計では、政府の対策にもかかわらず、ブラジル国内の未成年の売春婦の数は約50万人に上ったという。
政府に対しては、根本原因への対処を怠り、児童売春の現状を隠そうとしているだけだとの批判も聞かれる。
アントニア・リマ・ソーザ検察官によれば、こうした少女たちは、社会から省みられず、深刻な女性蔑視の伝統のある非常に貧しい層の出身だという。
フォルタレーザは児童売春が盛んなことでも有名だが、背景にはやはり貧困の問題がある。警察は児童売春を取り締まっているほか、市当局も新たな対策を行ったとしている。
売春によって妊娠した少女たちを支援している団体の関係者によれば、昨年6月のコンフェデレーション・カップの際に警察は未成年の売春婦やストリートチルドレンを町の外にある施設に保護した。ところがコンフェデ杯が終わると子どもたちは施設を出されたという。このことについて、警察からコメントは得られなかった。
「警察が気にかけているのは子どもたちが健全な環境で育つことではない。子どもたちを隠すことだけだ」とこの関係者は言う。
別の援助団体では、売春婦だった少女たちに基本的な教育や職業訓練を受けさせている。多くの若者が料理人や美容師、コンピューター技術者に育っているという。
21歳のジュシレイジさんも職業訓練を受けた1人だ。売春婦になったのは13歳のとき。失業中の母親には黙っていたが、15歳の時に発覚した。
「母は泣いてやめてくれと言ったけれど、私は『ママ、これならば簡単にお金が稼げる』と答えた」とジュシレイジさんは言う。
ジュシレイジさんはかつて外国人の客を見つけるのに利用したビーチのバーに取材班を連れていった。夜になると、店内は、主に欧州から来た年配の男性客でいっぱいになる。セクシーな身なりの若い女性が店内をうろうろし、男性客と電話番号を交換したり、一緒に腕を組んで出ていったりする。
そして夜中になると、売春婦たちは外に出てきて、警察署の前だろうとかまわず道行く車に声をかける。
10歳代前半にしか見えない売春婦も多かった。話を聞いた自称16歳と17歳の少女2人もそうだ。2人はにこりともせず、かすれた小さな声で話をした。
1人はこの商売を始めてまだ2カ月。もう1人は稼いだ金で洋服や学用品を買っていると語った。
妊娠しても客を取らざるを得なかったと語る少女たちもいた。ジュシレイジさんもそうだった。
W杯では外国から60万人のサッカーファンが訪れると予想されている。
ブラジルが抱える夜の闇