Gメール開設から10年、ユーザーが払う「無料」の代償

米グーグルのウェブメールサービス「Gメール」が10周年を迎えた

2014.04.01 Tue posted at 18:15 JST

(CNN) 米インターネット大手グーグルのウェブメールサービス「Gメール」が4月1日で提供開始から10年目を迎えた。同サービスは無料で使えるが、代償を伴わないわけではない。グーグルはユーザーに関する膨大な量の個人情報という形で元を取っている。

世界で推定5億人以上が利用するGメールは、ウェブメールの世界で支配的な存在になった。同時にプライバシーを巡って絶えず批判にさらされ、米国や欧州では裁判も起こされた。同社がメールの内容を盗み見していると訴える声もある。

同社の売上高は2013年10~12月期だけで168億6000万ドル(約1.7兆円)に上る。Gメールで収益を上げる手段として使われているのが、メールを自動的にスキャンして整理し、そのデータを使ってユーザーが興味を持ちそうな広告を表示させる方法だ。

「安定した電子メールサービスの提供と引き換えに、あなたの電子メールの隣に広告を表示させ、あなたのメールをスキャンしてどの広告がふさわしいかを判断させてほしい、というのがGメールの約束事だ」。米サンタクララ大学のエリック・ゴールドマン教授はそう解説する。

米国での月間利用者数でGメールはトップ 出典:comScore

Gメールでは使用頻度や文脈などを元にキーワードを探し出し、そのメールに関連付けた広告を表示する。例えばスピニングエクササイズについてのメールをやり取りすれば、ダイエット製品の広告が表示されたりする。

メールをスキャンして収集した情報は、以後の広告のためのユーザープロフィル作成にも使われる。

ユーザーはあまり認識していないかもしれないが、グーグルのような企業はさらに、検索や地図、メールといった別々のサービスから収集した情報をもとに、個々のユーザーについて包括的なプロフィルを作成している。

法律専門家のベナム・デヤニム氏は「無料のものなど存在しない。だから自分が無料サービスにどんな価値を提供しているのかを理解しておくことが重要だ」と話す。

無料サービスでメールを送受信すれば、自分の関心事や人間関係、経済状態などに関する情報を提供することになる。こうした情報を抽出して整理すれば、広告会社や広告主にとって大きな価値をもつ。

ユーザー情報に基づくターゲット広告がビジネスモデルの主流に

マイクロソフトの「アウトルック」やヤフーなどの大手はいずれも、無料サービスの提供を通じて何らかの利益を確保している。ハイテク企業の間では、ユーザー情報に基づくターゲット広告がビジネスモデルの主流になり、フェイスブックなどのソーシャルメディアもこの方法で収益を上げている。

企業が個人情報を収集する場合、そのことを顧客に通知する義務がある。しかし長々と書かれた利用条件やプライバシーポリシーにユーザーが目を通すことは滅多になく、単純に「同意」ボタンを押してしまう。

ただ、グーグルはプログラムの具体的な仕組みについて詳しいことを公表しておらず、ユーザー情報の扱いに関する情報公開が不十分だと批判する声もある。

グーグルを相手取った訴訟では、Gメールを使っていない人がGメールのユーザー宛てにメールを送った場合、同社のプライバシーポリシーに同意していないにもかかわらず、影響を受けてしまうことも問題視された。

これに対してグーグルは、Gメールのユーザーにメールを送っている非ユーザーは、プライバシー保護を期待していないと反論している。

プライバシーを巡る法規制は厳しさを増す

Gメールのサービスが始まった10年前、ユーザー情報の収集に関する規制はまだ緩やかだった。だがプライバシーを巡る環境はこの10年で激変した。

米国では複数の州が個人情報の利用を制限する法律を制定し、米連邦取引委員会(FTC)はプライバシー保護規定違反の積極的な摘発に乗り出している。業界では容認される行為についてのベストプラクティスを採用する動きが広がった。

利用する側も、Gメールのような無料サービスを使うことの価値と、自分のプライバシーの重さをはかりにかける必要性が強まっている。

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