世界の先端オフィス、心地よさで能率アップ

シアトルに建設予定の米アマゾン本社=NBBJ提供

2014.04.04 Fri posted at 17:00 JST

(CNN) 快適さを重視した新しいオフィスのあり方を模索する動きが、世界的に広まっている。

代表的なのはインターネット検索大手、米グーグルのロンドン本社。会議室は従来のような殺風景なものとは異なり、色鮮やかで奇抜な内装となっている。休憩スペースにも花柄の壁紙をあしらい、揺り椅子を置いた。

設計者であるリー・ペンソン氏の念頭にあったのは家庭だという。あくまで人が主役で、その周囲に建物があるという発想だ。同氏の設計思想の底流にある考えは極めてシンプルで、心地よい空間を好む人間心理に素朴に従ったものだ。

ロンドンの出版社から韓国のIT企業に至るまで、世界中で職場デザインの革命が加速する中、変化の原動力となっているのはやはり快適さを追求する心理だ。従来の大企業型の無機質なオフィスでは、従業員が職場に愛着をもてない。自然と共存し、遊び心にあふれ、快適に――これがオフィス建築の新しい流行語となっている。職場環境を快適にすることで生産性を上げ、さらなる利益増大につなげる狙いだ。

米グーグルのロンドン本社=GESTALTEN 2014 / DAVID BARBOUR提供

ペンソン氏が設計したグーグルのロンドン本社も、従来の社屋にありがちな画一性を排し、従業員の創造性を引き出せるよう、多様な工夫が施されている。内装も頻繁に変わる。奇抜な会議室だけでなく、田舎風のカフェがあり、小奇麗な図書館がある。屋上の庭には、秘密の会議室まである。

グーグルが自由と創造性の重視によって従来型オフィスから脱却を図る一方、米インターネット通販大手アマゾンでは「オフィスの緑化」に注力している。昨年12月に建築許可が下りたシアトルの新本社は、3つのガラスの球体で構成される予定。空中庭園や花壇を配し、内部ではフロアから屋上まで大樹が茂るといった趣向だ。

アマゾンが社屋の自然回帰を図るのは、環境重視を宣伝するマーケティング戦略の域にとどまらない。植物が従業員のやる気を向上させ、仕事のストレスを軽減させるという理解が浸透し始めているのだという。

職場環境を専門に扱う「ワーク・スケイプ」誌は、窓も見えない仕切りの中で座って仕事をするような時代は終わったと指摘。自然界の要素を職場に組み込むのは、デザイン関係など創造性を重視する企業で特に顕著だという。

スペイン・マドリードの建築事務所セルガスカーノ=SELGASCANO / WAN BAAN提供

森の中に直接オフィスを構える企業も出てきた。スペインの建築事務所セルガスカーノは2009年に新オフィスを開設、ガラスのチューブを森の土壌に埋め込むような形になった。同事務所で働く建築家パオロ・トリンガリ氏は、自然のリズムに沿って仕事をすることで、太陽のちょっとした陰りなども繊細に感受できるようになったという。

植物に接することで知性が研ぎ澄まされるという点は、学術研究によっても示唆されている。米ワシントン州立大学の園芸学者バージニア・ローア教授は、植物と人間の生産性のつながりを調べた第一人者。窓のないコンピュータールームに植物をおくと、コンピューター上の作業の速度が上がることを実証した。ストレス軽減や血圧低下、集中力向上などの効果もあるという。

なぜ植物が職場を癒やすのか。ローア教授は、植物に備わる性質や植物を見たときの人間の反応が影響していると説明する。植物は相対湿度を人間にとって快適な水準にまで上昇させ、かぜを引きにくくするなど環境を整える。また、草木は人間にとって大昔から生存のために重要な存在であり、それに触れるとプラスの感情が生まれるという。もっとも、最終的な答えは依然、「興味深い謎のまま」とのことだ。

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