インドでポリオ根絶、WHOが公式宣言へ

インドでの「最後の患者」となったルクサール・カートゥーンちゃん

2014.03.24 Mon posted at 17:51 JST

(CNN) 世界保健機関(WHO)は3月27日、インドと東南アジアからのポリオ根絶を公式に宣言する。インドでは3年前にポリオと診断された少女を最後に、新たな症例は確認されていない。CNNはポリオ根絶の象徴的存在となった少女を取材した。

インドの西ベンガル州に住むルクサール・カートゥーンちゃん(4つ)は、生後1年6カ月だった2011年、右足が腫れるなどの症状が出て、検査の結果、ポリオと診断された。

両親は、もともと病弱で入退院を繰り返していたルクサールちゃんにそれ以上の薬物などを投与しない方がいいと考えて、ポリオのワクチン投与を受けさせなかった。今でもそのことを悔やんでいるという。

インドが困難を克服してポリオ根絶に成功した今、ルクサールちゃんはその象徴的な存在として新聞やテレビに出演し、根絶プロジェクトを主導してきた団体「国際ロータリー」のイベントに招かれるなどしてすっかり有名人になった。

ポリオは関節や筋肉を動かす脳や脊髄(せきずい)の細胞にウイルスが入り込み、身体にまひ症状が出る疾患。インドのポリオ患者は約3分の1にまひが残り、同国の身体障害者2100万人のうち半数はポリオに起因する。

ポリオワクチンの接種を受ける子どもたち

インドのポリオ根絶はわずか数年前まで不可能と思われてきた。世界では1988年から根絶を目指すプロジェクトがスタートしたが、この時点でインドでは、年間20万人以上の子どもがポリオを発症。人口が増大し、貧困層が数百万人を占める同国では不衛生な地域も多く、2009年になっても感染者は741人に上り、世界の1604人の半数近くを占めていた。

そうした現状の中、国際ロータリーのキャンペーンでは毎年1億7000万人の子どもにワクチンを投与し、そのための医療関係者200万人を確保。政府からは23億ドルを拠出させた。

まだ電気が通っていない地域も多く、電気があっても頻繁な停電に見舞われることから、ワクチンを低温に保つための冷蔵施設の確保も大きな課題だった。灯油を燃料に使った冷蔵庫の導入や、偏見解消のための啓発キャンペーンなどを通じてこうした課題を1つひとつ克服してきたという。

インドの根絶宣言により、現在でもポリオが残る国はアフガニスタンとパキスタン、ナイジェリアの3カ国のみ、地域では地中海東部沿岸部とアフリカのみとなった。

ルクサールちゃんは治療を受けて歩いたり走ったりできるようになった。右足は左足よりもやや短く、痛みを訴えることもあるが、ほかの子どもたちとほとんど変わらないように見える。父親は娘の将来を心配しながら、今後も必要な医療や教育が受けられるよう、少ない収入の中から蓄えに務めている。

インドでポリオを根絶

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