スペイン、夜型生活とお別れ? 生産性向上へ

これからのスペインは朝方に?

2014.04.06 Sun posted at 17:47 JST

(CNN) スペイン人が夜型生活を好むことはよく知られている。米ニューヨーク・タイムズ紙によると、推定25%のスペイン人が夜中まで起きてテレビを見ている。

深夜のテレビ視聴だけにとどまらない。レストランの開店時間の遅さから、短い平均睡眠時間(ある調査によれば、スペイン人は他の欧州の人々よりも53分睡眠時間が短い)、それを補う「シエスタ」(昼寝)にいたるまで、夜型生活はスペインの文化そのものとなっている。

だが多くのエコノミストは、この夜型生活がスペイン経済の生産性を阻害していると指摘。生産性向上を目指し、夜型生活を改めようとする動きが広がっている。

対策の1つとしてあげられているのは、標準時を遅らせることだ。

地図でみると、スペインは、英国やアイルランド、ポルトガルといった国々と同じ経度上に位置している。地理的には本来、グリニッジ標準時(GMT)を採用するのが筋だ。

だが現実には、スペインでは、フランスやドイツなどの中央ヨーロッパ各国とともに、英国よりも1時間早い標準時が採用されている。

スペインのタイムゾーンはドイツやフランスと同じだ

これには歴史的背景がある。第2次世界大戦前までは、スペインの標準時は英国と共通だった。しかし大戦中、独裁者フランコがヒトラーのナチス・ドイツとの同盟を画策、それに合わせてドイツと同じ標準時が導入されたのである。

70年後の現代スペインでいまだに中央欧州標準時(CET)が採用されているのは、フランコ政権時代の名残だ。

本来の地理に合わせた標準時に戻すことにより、生産性向上につながるのではないか、というのがエコノミストの提案だ。これはあくまで仮説にすぎず、実際に成功するかもわからない。

ただ、スペイン人が本気で経済改善に取り組んでいることを示す良い兆候であることは確かだ。

スペインの現状はある意味、欧州全体の象徴だ。失業率は26%にも上り、若年層ではさらに数字が倍増する。若者の約半数が失業中となる計算だ。何年も景気後退が続き、債務危機を回避するため、欧州当局は財政援助に乗り出さねばならなかった。

だが、ここにきて良いニュースも出始めた。長引く景気後退の末、ついに国内総生産(GDP)がプラスに転じた。13年の輸出も6%増となり、今年も同様の伸び率が続くと見られている。

スペイン経済はこのまま勢いを取り戻せるか

国内株式市場も堅調で、外国人投資家も戻ってきた。米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏もスペインの建設会社の株式を購入、取得額は1億5000万ドル(約150億円)に及ぶ。

好転の要因は、スペインが本腰を上げて経済改革に乗り出したことにある。官民セクターは効率化された。また、当局は強硬な反対を押し切り、退職年齢引き上げに成功。さらに解雇規制も緩和され、労働市場が柔軟化された。スペインの人件費は、上昇しているドイツやフランスと違い、下落基調にある。

こうした改革がすべて相まって、スペインの競争力は増大した。経済成長が税収増に結びつき、財政状況が安定するという好循環だ。

だが、スペイン当局はこの程度で満足すべきではない。歳入に占める税収の割合は、いまだ欧州最低水準にとどまっている。最大の課題は失業率であり、なによりも若年失業率を改善しなければ、「失われた世代」を生み出すことになりかねない。

欧州各国は厳しい緊縮財政を受け入れてきたが、真に必要なのは構造改革だ。スペインの標準時を遅らせたところで、どれほどの成果を生むか、判然としない。

しかし、それが生産性全般をめぐる議論の活性化につながるのであれば、すぐにでも取り組むべきだろう。

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