中国は「報道の暗黒大陸」か 現地ジャーナリストに聞く

当局による妨害が入ることもあるという

2014.03.16 Sun posted at 16:37 JST

香港(CNN) 国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(本部パリ)が先ごろ発表した2013年の世界各国・地域における報道の自由度ランキングで、中国は179カ国中173位に低迷した。ジャーナリストの投獄やインターネットの検閲が要因だ。報道の自由度ごとに色分けした世界地図では、中国が黒く塗りつぶされている。

状況が改善する兆しもなさそうだ。今年初頭に人権活動家の許志永氏の裁判が行われたが、これを報道しようとしたCNNや英BBCの記者が裁判所の敷地外で手荒い扱いを受け、追い出された。その様子は世界中で目撃された。

外国メディアは文字通り閉め出されたわけだが、中国の現状について、CNNが識者3人から話を聞いた。

米紙ウォールストリート・ジャーナルの中国支局長であるチャールズ・ハッツラー氏は、「近年、事態は悪化の一途をたどっている」と警鐘を鳴らす。特に地方部や小都市では、地域当局の意にそぐわない報道があると、カメラが没収されたり、壊されたりすることもあるという。

特派員は官僚機構の嫌がらせにも直面している。外国人記者のビザ更新が遅れ、場合によってはビザ取り消しにまで至ることが増えた。

CNN取材班も当局の妨害に遭った

ビザ問題については、米紙クリスチャン・サイエンス・モニターの中国支局長で、北京の中国外国人記者クラブ(FCCC)会長を務めるピーター・フォード氏も危機感を表明。米紙ニューヨーク・タイムズや米通信大手ブルームバーグの記者が指導層の私財問題を追及してビザ発給を拒否された件に触れた。

フォード氏は、当局がビザ発給を遅らせることで、記者個人のみならず、支局全体を暗に威圧しているのはないかと指摘する。同氏は「これほど長く待たねばならない理由について、まるで公式な説明がないとなると、報道内容への報復ではないかという疑念が募る」と述べる。

中国人の記者を取り巻く環境はさらに厳しい。継続的な脅しを受けたり、投獄されたりするリスクもある。ハッツラー氏も、中国人記者は国外脱出することができないため特派員より弱い立場にあると指摘、保護の必要性を訴えた。

ただ、中国の経済解放が進むにつれ、報道に対する当局の締め付けも及ばなくなりつつあるようだ。

香港大学教授でジャーナリズムが専門の陳婉瑩氏は、中国が世界経済に組み込まれ、企業の透明性が求められるなか、記者が入手できる情報も増大した点に着目する。

ニューヨークや香港に上場する企業であればデータを公開せざるをえないことから、公開情報を手がかりに取材を進めやすくなった。

また、ソーシャル・メディアの浸透も手助けとなっている。中国版ツイッター「新浪微博(ウェイボ)」やメッセンジャーアプリ「微信(ウェイシン)」が普及し、自らニュース発信する市民ジャーナリストも増えた。

ハッツラー氏は「政府はこうしたテクノロジーを統制しようとしているが、もう潮流は定着している。当局が事件の語り口を意のままに操ることは不可能になりつつある」と指摘する。

さらに、国営メディアの内部からも意欲的な記者が出てきており、党の公式方針から離れて活動することすらあるという。

陳氏は「党の機関紙だからといって、絶対服従ではないようだ。中国地元メディアの多様性が増大している証しだ」と説明する。党に印刷物を検閲された場合、記事をネットに掲載するという手段も残されている。

中国当局の記者への姿勢は手荒くなっているが、記者の側でも巧みに対処している。黒々と塗りつぶされた地図上にも間隙(かんげき)をぬう余地はありそうだ。

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