「秘密のレシピ」で消費者を引き付けろ 米コカ・コーラの販売戦略

1915年のポスターですでに「偽物」に注意するよう呼びかけている=Coca-Cola Company提供

2014.05.18 Sun posted at 18:22 JST

ロンドン(CNN) 米飲料大手のコカ・コーラが先ごろ発表した2013年12月期通期決算では純利益が前期比5%減の86億ドル(約8600億円)となったほか、通期での販売量も予想を下回る2%の増加にとどまった。

足を引っ張る格好になったのは炭酸飲料の不振で、販売量は1%の増加に過ぎなかった。消費者が水や果物ジュースなどに流れており、世界的な炭酸離れが進んでいる。

ただ、ペプシコなどの競合他社が炭酸飲料の販売不振を埋めあわせるために他商品への展開を図るなか、同社はあくまでコーラ飲料に注力する姿勢を打ち出す。炭酸飲料業界の苦境にも動じないコカ・コーラのマーケティング戦略の中核にあるのは、謎めいた「秘密のレシピ」だ。

消費者心理の専門家は、あえてレシピの秘密性を強調し、コーラに神秘の衣をまとわせることで、消費者を引きつける戦略だと指摘する。

その秘密に迫っていこう。

「秘密のレシピ」は厳重に保管されているという=Coca-Cola Company提供

薬剤師のジョン・ペンバートン氏がコーラを「発明」し、1886年に発売開始して以来、レシピは秘伝として口頭で伝えられてきた。

同社のウェブサイトによると、レシピが初めて文書に記録されたのは1919年。アーネスト・ウッドラフ氏が率いる投資家グループが同社を買収した際、融資を引き出す担保としてレシピが文書化された。

以来、レシピ文書はアトランタの銀行内に保管されていたが、2011年、同社の博物館「ワールド・オブ・コカ・コーラ」の専用保管庫に移されることになる。その背後には、マーケティング戦略の一貫として、レシピの秘密めいた雰囲気を強く押し出そうとする思惑があった。

保管庫は赤い光に照らされて煙幕に包まれており、神秘の気配をまとう。周囲には巨大な鉄壁を張りめぐらせる徹底ぶりだ。

鉄壁の内部にもう一つの保管庫があり、厳重管理されている。同社によれば、さらにその内側に金属ケースがあり、レシピを書き付けた一枚の紙片が眠っているという。

もっとも、こうした神秘化には懐疑的な向きもある。

この中に「秘密のレシピ」が=Coca-Cola Company提供

コーラの歴史に関する著作があるジャーナリスト、マーク・ペンダーグラスト氏によると、コーラが発明された1868年は医薬品特許の最盛期。「コカ・コーラ」の名前で特許が申請されなかったのは皮肉な話だと指摘する。レシピにはその実、安っぽい製法が書かれているにすぎず、巨額の利益との落差を隠すため秘密にされているだけだとの見方を示す。

一方、同社の説明では、特許を取らないのは、原液製法の秘密が露見するのを防ぐためだとされている。

過去には、古文書を掘り起こして成分の秘密を解明したと主張し、レシピを公開する人々も現われた。だが同社はいずれも幻想として否定している。「本物」はただ一つしかないという立場だ。

実は、ペンダーグラスト氏の著書では、もう一つの秘密のレシピが紹介されている。コカ・コーラ名付けの親であり、同社のロゴも考案した「陰の立役者」であるフランク・ロビンソン氏の手書きによるレシピの写しだ。どちらも「本物」で、大本の製法の異なるバージョンだと主張する。

ただ、ペンダーグラスト氏は、正確な製法を特定しても意味がないとする。著書内でも紹介されているように、同氏がコカ・コーラ広報担当に話を聞くと、秘密のレシピが人手に渡ったところで同社に対抗できるはずがない、と返されたという。

コカ・コーラがすでに世界中いたる所で手に入る現状で、他社がより高額な類似製品を作っても誰も買わないだろう、という理屈だ。

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