「過保護な乳母」でなく 禁煙の次は肥満対策を

2014.03.02 Sun posted at 11:43 JST

(CNN) 近ごろ報じられたなかで、最も重要な経済ニュースはなんだろうか。オバマ米大統領による一般教書演説か。あるいは、米連邦準備制度理事会(FRB)関連か。

ここでいう最も重要な経済ニュースとは、中国当局が国中の学校で喫煙を禁止するとの決定を下したというものだ。中国は喫煙大国であり、喫煙者数は3億5000万人に上るとされる。

だが、これは経済ニュースだろうか。以下の数字をみれば、そういえそうだ。

米公衆衛生局の報告書によれば、喫煙関連のコストは年間2890億ドル(約29兆円)に上る。これは米連邦教育予算総額の約4倍に相当する。

喫煙が原因で死亡した米国人も、過去50年間で2000万人になるとされており、戦死者の総数よりも多い。今年も、50万人近くの米国人が喫煙を原因に天寿を全うすることなく死亡するだろうと予測されている。

ただ、事態は改善に向かっている。中国における学内喫煙の禁止は、大きな一歩だ。世界保健機関(WHO)がまとめたなかで最新のデータである2010年の数字を見ると、全世界109カ国で病院内の喫煙が禁止されている。レストランでの喫煙を禁止しているのは42カ国、バーは35カ国だ。

公共の場での喫煙禁止を定める国が年々増加した結果、喫煙率も大幅に低下している。男性の喫煙率は1980年に全世界で41%だったのが、2012年には31%にまで減少した。

この動きに一役買ったのが、マイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長だ。02年に市長に就任した同氏が喫煙禁止策を打ち出した際、国内から批判の声が上がっただけでなく、欧州からも賛同の声は聞かれなかった。当時、大都市で大々的に喫煙禁止を掲げるのは、前例がなかったのである。

しかし、それから数年以内に、パリ、ロンドン、ローマといった欧州の都市も同様の施策を講じた。そして今回、新たに中国が喫煙禁止に乗り出したのである。

ニューヨークにおける喫煙禁止の効果は、すぐに明らかになった。米公衆衛生誌「アメリカン・ジャーナル・オブ・パブリックヘルス」によると、04年、心臓発作で入院する患者は3800人減少。医療費も5600万ドル減った。

過保護な乳母のようだとして、ブルームバーグ氏らを批判する声もある。人々から選択肢を奪っているという批判だ。

しかし、喫煙にまつわる膨大なコストを考慮すれば、正解は明らかだろう。喫煙者ですらその点は同意するかもしれない。

そもそも、1965年には42%だった米国の成人喫煙率も、今日ではわずか18%に過ぎない。

単純に多くの選択肢を確保すれば良いというものではない。教訓として重要なのは、正しい情報を提示したうえで、情報を踏まえた選択を可能にすることだ。

喫煙の次に対処すべきなのは、米国民の3分の1以上を悩ます肥満問題だ。米疾病対策センター(CDC)の調べによると、肥満にまつわるコストは年間1470億ドル(約14兆円)に上る。正しい情報を踏まえたうえで、栄養価の低い高カロリー食品を避けることなどができるよう、最善の仕組みが必要だ。

肥満防止対策に乗り出すことは「過保護な乳母」ではなく、健康で元気な生活を送るための手助けだ。

喫煙禁止の場合と同じく、大胆な施策には最初は懐疑の声がついてまわるだろう。しかし、数年後になってみれば、パリや北京でも同様の対策が取られているかもしれない。

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