香港(CNN) 中国の国営新華社通信は5日、南シナ海領有権論争での中国の主張をドイツのナチス政権の興隆に例えたフィリピンのアキノ大統領の発言に関連し、同氏を「無知」「素人の政治家」などと酷評する論評を伝えた。
アキノ氏は「アジアで賢人の政治家の偉大な候補者と目されたことは一度もない」ともけなした。
同大統領は米紙ニューヨーク・タイムズとの会見で南シナ海の領有権論争に触れ、国際社会に対し中国の言い分に抵抗する比政府の立場への理解の拡大を要請。この際、ヒトラーが1938年にチェコスロバキア(当時)の領土を要求し、欧米がチェコ支援に失敗した例を引き合いに出していた。
アキノ氏は「どの段階に来たらもうたくさんだ」と言わなければならないのかと主張。「国際社会は最早、チェコのズデーデン地方はヒトラーをなだめ第2次世界大戦を阻止するため与えられたことを忘れてはいないとくぎを刺さなければならない」と求めた。
これに対し、新華社の論評は、アキノ氏の無意味な攻撃は歴史と現実に無知な素人の政治家の真の姿をさらけ出したとこき下ろした。
アジア諸国指導者による領土の主権論争に絡む世界大戦への言及については、日本の安倍晋三首相が世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に先に出席した際、日中関係の現状を第1次世界大戦前の英独関係になぞらえ、物議を醸したことがある。
新華社通信の論評は、日本とフィリピンによるこれらの例えを説得力がないと指摘。南シナ海の領有権論争については、中国は確かな歴史的根拠を基に主権を唱え、平和的な発展の道を選んでいると主張した。
南シナ海では中国、ブルネイ、マレーシア、フィリピン、台湾とベトナムが全海域もしくは一部海域の領有権を求めている。フィリピンと中国は比本土から西へ200キロ離れたスカボロー礁(中国名・黄岩島)の主権で対立、両国艦船が周辺海域でにらみ合う事態も起きていた。
南シナ海には豊富な漁業資源と海底のエネルギー資源が内蔵しているとされる。