エアバス・ベルーガ 世界一変わった外観の貨物機の秘密

独特の外観を持つ「A300-600ST」。愛称は「ベルーガ」だ

2014.02.11 Tue posted at 17:30 JST

(CNN) 世界で最も奇妙な外観の飛行機の1つを見かけることがあるとすれば、そこはフランス南部の都市トゥールーズかもしれない。

欧州航空機大手エアバスのA300-600STは、見た目がシロイルカによく似ていることから「ベルーガ」の愛称で知られる。しかし見た目が独特なだけではない。ベルーガは欧州の航空機製造において非常に重要な役割を担っている。

エアバスはかつて欧州各国の航空機メーカーのコンソーシアムだったことから生産拠点がヨーロッパ大陸中に点在しており、各工場がそれぞれ異なる機体部品を製造している。

全5機のベルーガはいずれもエアバスが運営し、各工場で製造された旅客機の部品をトゥールーズやドイツ・ハンブルクにある工場の最終組み立てラインに輸送している。

エアバスは1990年代半ばまで、大型部品の輸送に同社のライバルであるボーイングの輸送機C-97を改造した「スーパーグッピー」を使用していた。しかし、スーパーグッピーはエアバスが導入した時にはすでに時代遅れだった。

機体前方には特徴的な「こぶ」が

エアバスは、事業の急成長に対応するためにはより優れた輸送機が必要との結論に至った。

新輸送機の機体には、すでにルフトハンザやエールフランス、アメリカン航空などの航空会社で実績のあったA300-600の機体が採用された。現在運用されている5機のベルーガは、A300-600を輸送用に改造したものだ。

機体上部を取り払い、そこに、より幅広の胴体セクションを設置した。機体前部に特徴的な「こぶ」があるのはそのためだ。また操縦室を低い位置に移すことにより、機体前方からの貨物の積み降ろしを可能にした。その結果、驚くほど広々とした貨物室が実現した。

最大積載量ではベルーガの47トンを超える貨物機もわずかに存在するが、巨大な貨物室を備えるベルーガは、例えば飛行機の機体部品のように巨大だがそれほど重くない貨物の輸送に最適だ。そのため人工衛星やヘリコプター、さらに美術品の輸送にチャーターされることもある。

そのベルーガも導入から間もなく20年目を迎えようとしており、徐々に「老朽化」と「限界」を見せ始めている。

シロイルカにそっくり?

1994年のベルーガの初飛行以来、エアバスの航空機の輸送量は5倍近くに増加した。

同社はよりグローバル化し、部品供給のための拠点を多角化すると同時に中国と米アラバマ州に組み立て工場を開設した。

しかし最大積載量を積んだ状態でのベルーガの飛行可能距離は1500海里(約2800キロ)と比較的短く、中国とアラバマ州はベルーガの飛行可能範囲のはるか外に位置する。

エアバスは増加の一途をたどる輸送量に対応するため、「フライ10000」と呼ばれる計画を実施した。この計画は、2017年までにエアバスの輸送機の年間総飛行時間を1万時間に増やすことにより、同社の物流インフラを最適化することを目的としている。

ベルーガもこの計画の一端を担っており、今後1日当たりの飛行時間の延長が見込まれている。

しかし航空機の注文数が過去最高を記録する中、エアバスは老朽化する5機のベルーガに重要な輸送業務を託すわけにはいかない。

エアバスは後継機の導入も検討している=同社提供

エアバスはまだ何ら決断を下してはいないものの、新たな貨物機の導入を検討している。

ベルーガXLと呼ばれるこの代替機はA330の機体をベースに作られる可能性が高い。

XLは従来機よりも飛行可能距離が長く、より重い貨物の輸送が可能と見られている。またエアバスが航空機の翼を製造している英ブロートンなど、滑走路が比較的短い空港にも着陸可能だ。

さらにXLの導入により、貨物便数を従来の倍の週120便に増やすことも可能と見られる。

ただ現時点で確実に言えるのは、XLも現行ベルーガと似た外観になるということくらいかもしれない。

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