韓国で食事風景のネット中継がブーム

2014.02.16 Sun posted at 17:35 JST

(CNN) 韓国のインターネットで最近、一般ユーザーによる食事風景の生中継が人気を博している。

「食事の放送」を意味する「モクバン」と呼ばれるオンラインチャンネルは、食べる人とその様子を見る人がチャット機能を使って交流する場にもなっている。

なかでも人気なのが33歳の女性パク・ソヨンさん。毎日夜8時になると、数千人の視聴者がパソコンの前でパクさんの食事が始まるのを見守る。

パクさんははかなげな容姿ながら、その食欲はゾウも顔負けといったところ。1度の食事でLサイズのピザ4枚や3キログラムの牛肉をぺろりと平らげる。

量が多い分食事には時間がかかるが、食後にはさらに2~3時間ファンとの語らいに費やし、放送時間は1日4~6時間に及ぶ。

パクさんにとって、食事中継は娯楽であるとともに重要な収入源でもある。中継で得られる収入は月に1000万ウォン(約95万円)にもなるという。

パクさんが利用している生中継サイト「アフリーカTV」では、視聴そのものは無料だ。だが放送が気に入った人は専用の仮想通貨を支払うことができる仕組みになっており、30~40%の手数料を差し引いた額がパクさんの取り分となる。

キムチなどさまざまな食材が集う韓国

ただし元手も相当かかっている。パクさんによれば中継分の食事代だけで月に3000ドルくらい使っているという。

「ファンからは、私が食べている様子を見るのはすごく楽しいと言ってもらえる」とパクさんは言う。「私がとてもうれしそうに、おいしそうに食べているから。ダイエット中の視聴者も多くて、私を通して食べている気分を味わっていると言われる」

食べても太らないパクさんは女性視聴者からは嫉妬を買いそうだが、実際は熱烈なファンの女性もいて、視聴者数でも6対4で女性のほうが多いという。

「これまでで最もうれしかったコメントは、私が食べているのを見ているうちに拒食症を克服できたというものだった」とパクさんは言う。

放送中に食べる物の3分の1は自分で調理し、残りは外部で調達。業者から食事や食品を提供したいという話もよく持ち込まれるが、試食して気に入ったものでなければ放送には使わないという。

このような食事中継がブームになった背景には、文化的な要因もありそうだ。

食事中継がブームになった背景には文化的な要因もある?

アフリーカTVの広報担当、セリム・アン氏はこう語る。「3つの大きな理由があると考えている。韓国における単身世帯の増加と、それによる人々の孤独、そして過剰なダイエットブームだ」

それに韓国の人々は「個食」が嫌いだ。

「韓国人にとって、食事は極めて社会的な行為で他者と分かち合うものだ。韓国語で家族という言葉は、一緒に食事をする人々を意味する」と、梨花女子大学のパク・スンヘ教授は言う。パク教授は、食事中継は1人で食事するのを嫌う独り暮らし層から支持されているのではと考えている。

それは放送する側も実は同じだ。パクさんは「友人の多くが結婚してしまい、以前は孤独で退屈な生活を送っていた」と言う。

アン氏によれば、テレビのグルメ番組をまねして食事風景の生中継をする人が出てきたのは2009年ごろ。今では同社の5000チャンネルのうち、5%が食事中継だという。

パクさんはこのほど、昼間の勤めをやめた。食事中継と、アパレル業への進出を含む今後のビジネス展開に集中するためだ。

でも毎日6時間も中継をやっていたら、プライベートの生活を楽しむ時間がないのではないかと尋ねると、パクさんは「中継のほうがずっと楽しい」と答えた。

韓国で食事風景のネット中継がブーム

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