韓国の「チョコパイ」が北朝鮮を変える?

北朝鮮の変革は「チョコパイ」から?

2014.02.02 Sun posted at 18:18 JST

(CNN) 丸いビスケットにマシュマロをはさみ、チョコレートでコーティング。韓国で親しまれる菓子「チョコパイ」が、北朝鮮住民の間にひそかに浸透している。チョコの甘さが北朝鮮に変化をもたらす可能性もある。

韓国と北朝鮮が軍事境界線付近で共同運営する開城(ケソン)工業団地。ここで7年間にわたり工場を操業していた韓国人経営者は、北朝鮮から通ってくる従業員たちが初めてチョコパイを口にした時の顔を今も覚えている。

ひと言でいえば「恍惚(こうこつ)」の表情だった。

韓国ならどこでも50円ほどで買える、ありふれた菓子。しかし北朝鮮側では珍重され、闇市場で1000円の値が付くこともある。緊張関係が続く南北の間に、「甘いもの好き」という思いがけない共通点が浮かび上がる。

米ニューヨーク市内のギャラリーでは今月、「北朝鮮のチョコパイ化」と題した美術展が開催されている。アーティストのジン・チョ・チェさんは、チョコパイが北朝鮮でこれほど喜ばれるのは「悲しい話だ」と語る。

開城(ケソン)工業団地の衣料工場

北朝鮮の朝鮮労働党機関紙、労働新聞の紙面に溶かしたチョコレートを吹き付け、コカコーラのロゴをまねた字体で「チョコパイ」の文字を浮き上がらせた作品がある。チョコパイの山、金めっきのチョコパイなども展示されている。

チェさんはチョコパイに「社会を変える物としての可能性」を見出しているという。チョコパイには南北間の感情に変化をもたらす手段としての力があると、チェさんは考える。

英誌ロンドン・レビュー・オブ・ブックスのリチャード・ロイド・パリー氏は、「洗脳」「隔離」といったイメージがつきまとう北朝鮮住民も、実は外の世界から完全に切り離すことは不可能だと指摘する。

チョコパイへの渇望は政治的な危険をはらんでいるかもしれない。

北朝鮮の従業員にチョコパイを食べさせた経営者は、同時に米国の象徴ともいえるコカコーラを出したという。

「かれらが資本主義を垣間見て、そんなに悪いことばかりでもないという印象を持ったことは明らかだ」と、CNNとのインタビューで振り返る。従業員らは洋式トイレの使い方を知らず、トイレットペーパーを見たこともなかった。

板門店の「帰らざる橋」

開城工業団地では、100人以上の韓国人経営者が衣料や靴などの工場で北朝鮮からの従業員約5万人を雇っている。

昨年は南北情勢の悪化にともなって5カ月間閉鎖されたが、9月から操業を再開した。ここは北朝鮮にとって貴重な資金源であり、南北が定期的に接触する唯一の場所でもある。

同経営者によれば、北朝鮮の従業員は自分の食べる米飯を持参し、工場側がスープやおやつを用意する。通勤用のバスもなく、徒歩でやって来る従業員たちの空腹を満たすため、コカコーラとチョコパイ2個のおやつは欠かせなかったという。

チョコパイを子どもに食べさせようと、こっそり持ち帰る従業員もいた。ただ最近はどの工場でも、さらにボリュームのあるおやつとしてカップヌードルを出すようになったという。

チョコパイの人気を知った活動家らが、風船に付けて北朝鮮へ飛ばしたこともある。

米非営利組織(NPO)コリア・ソサエティーのスティーブン・ノーパー氏は「北朝鮮住民も同じ人間だという事実を忘れてはいけない。99%の住民はより良い生活を求めている。何はともあれ、仕事の後にはチョコパイを食べたいのだ」と話している。

北朝鮮で「チョコパイ」が大人気

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