マルタ、市民権を9300万円で販売へ? EU内移動で物議

マルタが市民権を「販売」へ?

2013.12.24 Tue posted at 16:41 JST

(CNN) 南欧マルタの政府がこのほど、料金65万ユーロ(約9300万円)を支払った外国人に市民権を与えるという制度を打ち出し、欧州連合(EU)内などで物議を醸している。

欧州議会は来年1月15日の審議でこの制度を取り上げる。マルタ政府は国内外からの抗議を受けて施行を延期し、条件を見直す構えを示している。

新制度は最近、マルタ議会で承認された。審査を通過して料金を支払えば同国のパスポートを交付され、欧州の多くの国が加盟するシェンゲン協定の圏内を出入国審査なしで自由に移動できるようになる。

マスカット首相によれば、この制度を施行することによってマルタには年間3000万ユーロ(約43億円)の歳入増が見込まれるうえ、潜在的な投資家を呼び込むことができる。

他国では一定期間住んでいる外国人にパスポートを交付する例もあるが、マルタの新制度は同国の居住者でなくても申請できる。財力さえあればマルタ国民、つまりEU市民となり、欧州のほかの国にも住める。これに対して欧州議会からは、「EU市民権とシェンゲン協定の乱用」を懸念する声が上がっている。

マルタ国民の間でも賛否が分かれている

一方、マルタ政府の広報部門責任者はCNNとのインタビューで、「申請者には徹底的な審査を実施する」と強調した。ただし、料金の額などについては今後修正する可能性もあると述べた。

制度の施行を請け負う国際コンサルティング大手、ヘンリー・アンド・パートナーズのメージャー最高経営責任者(CEO)によると、申請者は書類提出後、データベース上の記録や身元などについて4段階の厳しい審査を受け、パスポートを入手するまでには4~6カ月かかる。申請者は年間200~300人、手数料や諸経費を含めた1人当たりの費用は総額85万ドルに上る見通しだ。

マルタの人権団体からは、紛争国などから逃れてきた人々が入国を拒否される一方で、富裕層だけが市民権を「買う」ような制度を認めるべきではない声も上がっている。

ただし欧州司法裁判所はこれまで、市民権獲得の条件などに関してはそれぞれの国に決定権があるとの判断を下しており、EUがたとえ反対を表明しても、制度の施行を阻止できるかどうかは不透明だ。

マルタ、市民権を販売へ?

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